第16話 東京都選抜練習試合

東京都選抜チームの選手たちは、神奈川県選抜との試合に向けて緊張と期待が入り混じった気持ちでグラウンドに集まっていた。悠斗もその一員として、自分の力を試す絶好の機会だと捉えていた。


試合当日は曇り空の下、湿気のある風が吹く中での試合となった。グラウンドの状態はまずまずで、少し湿り気が残っていたが、選手たちには影響が少ないコンディションだった。東京都選抜のベンチには、選手たちの親や関係者が応援に駆けつけており、応援の声が響く中、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。


試合が始まると、両チームともに積極的なプレーで試合を展開した。神奈川県選抜はスピードとパワーを武器にした攻撃的なプレースタイルを見せ、一方で東京都選抜は細かいパス回しとポゼッションで応じた。最初の数分間は互いに譲らぬ攻防が繰り広げられ、どちらが先に先制点を取るかが試合の焦点となった。


東京都選抜の選手たちは、川崎市選抜戦の反省を活かし、ディフェンスのポジショニングを改善し、攻撃時の連携を強化していた。悠斗もその中で重要な役割を果たし、特に攻撃の際には積極的にスペースを作り、ボールを受けるポジショニングに注力した。前半の20分過ぎ、東京都選抜のミッドフィルダーが中盤でボールを奪い、悠斗にパスを出すと、悠斗は瞬時にボールをコントロールし、相手ディフェンスを抜き去るドリブルを開始した。


悠斗のドリブルはスムーズで、相手のディフェンスを巧みにかわしながらゴールに向かって進んでいった。彼の鋭い動きが相手ディフェンスラインを崩し、ゴール前に迫った瞬間、悠斗は冷静にシュートを放った。ボールはゴールネットに突き刺さり、東京都選抜が先制点を挙げた。悠斗の得点により、ベンチや応援席からは歓声が上がり、チームの士気が一気に高まった。


神奈川県選抜も負けじと反撃に出た。前半残り時間が少なくなる中、神奈川県選抜は攻撃の手を強め、東京都選抜のゴールを脅かした。東京都選抜のディフェンス陣は必死に守り、ゴールキーパーも幾度となくビッグセーブを見せるなど、守備に奮闘した。前半終了間際、神奈川県選抜が得たフリーキックのチャンスにより、試合は再び均衡を保った。


ハーフタイムを迎え、東京都選抜の選手たちはコーチからの指示を受け、後半の戦術を確認した。コーチは「前半で取ったリードを守り切るために、守備の安定性を保ちつつ、攻撃では相手の隙を突いていこう」とアドバイスした。選手たちは気を引き締め、後半に臨む決意を新たにした。


後半開始から、神奈川県選抜の攻撃はさらに激しさを増し、東京都選抜のゴールを脅かし続けた。しかし、東京都選抜の選手たちは連携を強化し、冷静に守備を組織していった。悠斗もその中で、中盤からのサポートに徹し、相手の攻撃を防ぐためのカバーリングを行った。


試合終了間際、神奈川県選抜は最後の攻撃を仕掛けたが、東京都選抜の守備陣は落ち着いて対処し、ゴールを守り切った。試合が終了すると、東京都選抜の選手たちは歓喜の声を上げ、リベンジを果たしたことを喜んだ。悠斗はチームメイトたちと抱き合い、これまでの努力が実を結んだ瞬間を共有した。


試合後、コーチからは「素晴らしいプレーだった。前回の試合の反省を生かし、チーム全体が成長したことがよくわかる」との言葉がかけられた。選手たちはその言葉に感謝し、更なる成長に向けての意欲を新たにした。悠斗にとっても、この試合での経験は大きな自信となり、今後の試合に向けてのモチベーションを高める結果となった。

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