第15話 東京都選抜での練習
東京都選抜に選ばれた悠斗は、初めての練習日を迎えた。朝早くから、選抜チームの練習場である専用グラウンドに向かうため、家を出た。大田区から東京都選抜の練習場までの道のりは長く、彼の心の中には期待と不安が入り混じった感情が広がっていた。
練習場に着くと、すでに多くの選手たちが集まっており、リーダーたちによるウォーミングアップが始まっていた。悠斗はそれぞれの選手が、これから始まる厳しい練習に向けて真剣な眼差しを向けているのを見て、自分もその一員として戦う覚悟を新たにした。コーチが選手たちに向かって声をかける中、悠斗は一番前の列に並び、注意深く話を聞いた。
コーチはチームの目標や今日の練習内容を説明し、選手たちに対する期待を語った。「皆さん、今日はチームの連携を高めるための練習を行います。個々のスキルはもちろん大切ですが、チームとしての動きが最も重要です。それぞれのポジションでどう連携し、どう戦うかを学んでいきましょう。」コーチの言葉は、これからの練習が単なるスキルの向上にとどまらず、チーム全体の成長を目的としていることを示していた。
まずは基本的なパス回しとポゼッション練習が始まった。選手たちは二人一組でパスを送り合い、次に数人で囲んでポゼッションを行う。悠斗は周囲の選手たちと連携し、正確なパスを心がけることに集中した。彼のテクニックや判断力は、これまでの努力の賜物であり、選抜チームにおいても遜色ないレベルだった。
続いて、攻撃と守備の連携を強化するための練習が行われた。コーチは攻撃側と守備側のシミュレーションを行い、それぞれのポジションでの動きや役割を説明した。悠斗は自分が所属するフォワード陣として、相手ディフェンスを突破するための動き方や連携の仕方に重点を置いて練習に臨んだ。守備側の選手との1対1の状況や、スペースを作るための動きなど、細かな部分まで指導が行われた。
休憩時間になると、選手たちはコーチやスタッフと軽い雑談を交わしながら、リラックスした雰囲気で談笑していた。悠斗も他の選手たちとコミュニケーションを取り、チームメイトたちとの関係を築くことができた。彼の周囲には、すでに選抜チームの中で目立つ存在の選手や、これから注目されるであろう才能豊かな選手たちが揃っていた。その中で、自分がどのように位置づけられるのか、これからの練習を通じて明らかになっていくことだろう。
午後の練習では、実戦形式のミニゲームが行われた。コーチが設定したシナリオに基づき、選手たちは攻守の役割を担いながら試合を進めた。悠斗は自分の持ち味を生かし、特に攻撃時の連携を意識してプレーした。素早いドリブルや正確なパス、そしてゴールを狙う積極的な姿勢が、チーム内での彼の存在感を引き立てた。
練習が終わる頃には、悠斗の体は疲労感でいっぱいだったが、充実感もあった。チーム全体の動きが良くなり、個々のプレーも改善されていることを実感できた。コーチからも「今日はよく頑張った。皆さんの連携が少しずつ良くなってきています」との言葉がかけられ、選手たちはその評価に喜びを感じていた。
練習を終えた悠斗は、チームメイトたちと共にグラウンドを後にし、帰路についた。体力的な疲れはあるものの、心の中には明日の練習への期待と、自分が東京都選抜としての責任を果たしていくための決意が溢れていた。彼のこれからの道のりは決して平坦ではないが、この選抜チームでの経験を通じてさらなる成長を遂げ、次なる目標に向かって邁進していく覚悟が、悠斗にはあった。
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