第14話 東京都選抜結果発表

悠斗は次の日の朝、昨夜の疲れを残したまま目を覚ました。昨日の試験で体中に蓄積した疲労が、まだ抜けきっていない。しかし、心の中には少しだけ希望の光が灯っていた。自分なりに全力を尽くし、良いプレーを見せることができたはずだという自信が、彼の不安な気持ちを少しだけ和らげていた。


朝食を食べ終えると、彼の携帯にメッセージが届いた。「選考結果発表まであと数時間」と表示されている。悠斗は深呼吸をし、気を紛らわせようとするが、どうしても頭の中には昨日の試験の光景が蘇ってくる。ミスしたプレー、成功したプレー、他の選手との競り合い――それらが次々と頭をよぎる。特に、昨日の試合中に決定的なアシストを決めた瞬間が強く印象に残っている。「あのプレーで自分をアピールできたはずだ」と、自分を鼓舞するが、不安は完全には消えなかった。


午後になり、ついに結果が発表される時が来た。悠斗は緊張しながらも、意を決して選考結果が掲載されるウェブページを開いた。ページが表示されるまでの数秒が、彼には永遠のように感じられた。スクロールを進め、候補者リストの中から自分の名前を探す。手が震え、目も少し霞んでいる気がしたが、集中して一つ一つの名前を確認していく。


そして、ついに彼は自分の名前を見つけた。「桜井悠斗」。そこには、しっかりと自分の名前が書かれていた。彼の胸の中に一気に安堵と喜びが広がり、思わず息を詰めた。夢にまで見た瞬間が今、現実となったのだ。これまでの努力が報われた瞬間だった。


彼は深く息をつき、心臓が早鐘のように打つのを感じながら、自分の名前を何度も見直した。「間違いない、合格だ…」頭の中が真っ白になり、しばらくその場から動けなかった。信じられない気持ちと、ようやくここまで来たという達成感が混ざり合い、言葉にならない感情が込み上げてくる。


少しずつ冷静さを取り戻すと、すぐに家族に知らせた。母親が台所から出てきて、悠斗の表情を見るなり、すぐに何かを察した。「合格したの?」と母親が尋ねると、悠斗は無言で頷き、涙ぐんでいる母親に抱きしめられた。家族全員が彼の努力を知っており、その苦労が報われた瞬間を一緒に祝ってくれた。


「おめでとう、悠斗。本当に良かったね。」母親の言葉に、悠斗はただ感謝の気持ちを胸に抱きながら頷くだけだった。彼はいつも支えてくれた家族に感謝し、心の中で「ありがとう」と何度も呟いた。


その後、悠斗は早速、仲間たちにもこの知らせを伝えた。区選抜チームの友人たちにメッセージを送り、合格したことを報告すると、すぐにお祝いの返信が返ってきた。「おめでとう!」「やったな、悠斗!」といった祝福の言葉が続々と届き、彼は自分が多くの人々に支えられてきたことを改めて感じた。


悠斗はその日の夕方、いつもの公園に出かけ、一人でボールを蹴り始めた。今まで以上にボールが軽く感じ、彼の動きも自然と力強さを増していた。東京都選抜に選ばれたという事実が、彼のプレーにさらなる自信をもたらしていた。だが、彼は同時に「これで終わりじゃない」とも感じていた。選ばれたことで新たな責任が生まれ、さらなる努力が必要だと自覚していた。


これから待ち受ける新たな挑戦に向け、彼は心の中で誓った。「もっと強くなる。そして、次のステップへ進むんだ。」その誓いを胸に、悠斗は再びボールに集中し、今後の自分の成長に向けて練習を続けた。


合格の喜びを味わいながらも、彼はすぐに次の目標に意識を向けていた。東京都選抜に選ばれたことは、彼のサッカー人生における一つの大きなステップだったが、これからの道はまだ長い。クラブチームでの試合を見据え、悠斗は心を新たにし、さらなる高みを目指して進んでいく覚悟を固めた。


次の日から始まる選抜チームでの練習に向けて、悠斗は準備を始めた。これまで以上に厳しいトレーニングが待っているだろうが、彼は決して立ち止まらない。夢に向かって、彼のサッカー人生はまだまだ続いていくのだ。

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