同行
その後、アランとシモンはしばらくお互いの旅の話をしながら、ゼーゲン川を上る船旅を続けていた。
シモンは各地での布教活動の経験や、人々との交流を語り、アランは自分の旅の中で出会った土地や文化について話した。互いに異なる背景を持ちながらも、旅という共通点で繋がる彼らは、次第に打ち解けた雰囲気になっていった。
「あなたも、随分と色んな場所を訪れているんですね。きっと色々なことを学んできたことでしょう。」
シモンが感心したように言うと、アランは軽く頷いた。
「ええ、そうですね。それぞれの土地にはそれぞれの暮らしがあって、毎回新たな発見がありますね。」
「そうだろうとも。しかし、人はみんな違うけれど、その中に共通する何かを見つけた時、心が通じる気がするんだ。」
シモンの言葉にアランも微笑みを浮かべ、川沿いの風景に視線を戻した。
太陽は高く昇り、周囲は夏の空気に包まれていく。岸辺に並ぶ木々の緑が濃さを増し、遠くに見える小さな村の屋根がキラキラと輝くようだった。船の動きは緩やかで、心地よい揺れが続く。シモンは、ふと空を仰いで深呼吸した。
「この風も、川の流れも…すべてストリナの恩恵なんだと思うと、なんだかありがたく感じるよ。」
「確かに、自然の中にいるときこそ、何か大きな力に守られている感じがしますね。」
アランもシモンに同意するように言い、船の上で流れる時間を楽しむ。風は彼らの間を穏やかに吹き抜け、どこまでも広がる青空に鳥たちが自由に飛び回っていた。
しばらくして、シモンが再び口を開いた。
「アラン、あなたがこれから向かうノトス…あそこもまた、独自の文化と魅力を持った土地です。けれど、今は少し緊張した状況と耳にしました。旅の途中で何か困ったことがあれば、無理せず助けを求めることも大事だ。」
シモンの優しい言葉に、アランは改めて感謝の気持ちを感じた。
「ありがとうございます、シモンさん。その言葉、胸に留めておきます。無事に目的地にたどり着けるよう、気を付けて進みます。」
船は穏やかな流れに乗り、コネツヴィルへの道のりを着実に進んでいく。アランとシモンの会話は続き、共に旅をする中で少しずつ絆を深めていった。その一方で、アランはこれから向かうノトスへの思いを胸に、心の準備を進めていた。
そんな時、シモンがふと提案するように言った。
「アラン、もしよければ、コネツヴィルを抜けるまで旅を共にしませんか?あの地までは私の庭と言っても過言ではない。何かと役に立てるかもしれない。」
アランは少し驚いた表情を見せたが、すぐにその提案に感謝の意を示した。
「それは心強いです。シモンさんが一緒にいてくださるなら、確かに安心です。」
シモンは優しく微笑んで頷いた。
「それじゃあ、決まりだ。共に行こう、アラン。私と共に行けばコネツヴィルを抜けるまでは安泰だ。」
夕暮れになると、船はゆっくりと河港の街に停泊した。空がオレンジ色に染まり、川面にもその鮮やかな色が映し出され、美しい景色が広がっていた。街の灯りが一つ、また一つと点り始め、港からは人々の賑やかな声や笑い声が聞こえてきた。アランとシモンは船を降り、短い休憩を取ることにした。
「さて、少し足を伸ばしてこの街を歩いてみようか。夕食には良い場所があるかもしれない。」
シモンが軽やかに提案し、アランも頷いて彼と共に歩き出した。夏の夕暮れの涼しい風が、旅の疲れを少し癒してくれるようだった。
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