魔導運送士

運河

　魔導具店でトランクケースのメンテナンスを終えたアランは、再び宿探しを再開した。快適に過ごせそうな場所を探して、しばらく街を歩き続け、居住区に差し掛かるあたりで宿が立ち並ぶ通りに辿り着いた。通りにはさまざまな宿屋が軒を連ね、それぞれの看板が街の賑わいを反映していた。どの宿も旅人たちが集い、玄関口では宿泊客が話を交わし、出入りが絶えない。

　豪華な石造りの建物もあれば、こぢんまりとした木造の宿もあり、それぞれに特徴があった。商業区の中心に近い宿は旅人や商人が集まり、情報交換をする場として活気に満ちていた。アランはどの宿に泊まるか考えながら、街の賑わいと温かい雰囲気を感じつつ、ゆっくりと歩みを進めていた。

　通りのハズレにある木造の宿に決めた。宿は運河に面しており、窓からは水面を眺めながらゆったりと過ごすことができる。宿の雰囲気は落ち着いていて、街の喧騒から少し離れた静かな空間が広がっていた。運河を行き交う船を眺めながら、アランはようやく安堵し、一息ついて宿に入った。

　アランは宿の静かな部屋で、夕食が出るまでの時間を過ごしていた。窓を開けると、運河に沿った街の景色が広がり、夕暮れの空が優しく街を包んでいる。彼は窓辺に立ち、遠くの羽橋がゆっくりと昇降する様子を見つめた。羽橋が持ち上がると、大きな運搬船が滑らかに運河を通り抜け、その後橋が再び降りていく。

　船が通り過ぎるたびに、運河の水面がきらめき、街の灯りが運河に反射して美しい光景を作り出していた。

　運河沿いは整備された道はきれいに整えられており、その静かな通りを多くの人々が行き交っている。学生たちは、考え込んだ表情でゆっくりと歩きながら、難解な学問に思いを巡らせているようだった。中には、魔法学の書物を片手に持ちながら、理論の整合性を確認している者も見える。研究者たちは同僚と意見を交わしながら、課題について議論している様子がうかがえる。

　一方で、芸術家たちは運河沿いにイーゼルを立てて、運河や羽橋、街の建物をモチーフに、思い思いの絵を描いていた。筆が走る音が微かに聞こえ、彼らが生み出そうとしている作品が徐々に形を成していく過程が見て取れる。画家だけでなく、音楽家たちも運河の近くで演奏をしている。夕暮れの静けさの中に、楽器の柔らかい音色が響き渡り、通りを歩く人々に一瞬の癒しを与えているようだった。

　運河沿いの風景は、学問と芸術が共存するニウブルフならではの豊かさを感じさせる。人々がそれぞれの分野で努力を重ね、都市全体が知識と創造力で彩られていることがひしひしと伝わってくる。夕日が沈みかける中、その光が運河に反射し、柔らかな金色の輝きが街全体を包み込む。アランはその光景を眺めながら、静かに時間を過ごしていた。

　アランはその光景に見入っていたが、やがて宿のスタッフが夕食を運んできた。豊かな香りが部屋に広がり、アランは窓から目を離し、温かい食事に向かった。

　夕食は都市に集った食材をふんだんに使った料理で、アランはこの街での一日を静かに振り返りながら、食事を楽しんだ。