魔道具屋
アランがニウブルフの街を歩いていると、実に多様な人々が行き交っているのに気づいた。国際都市として栄えるこの街には、異国の人々たちが色とりどりの衣装をまとい歩いていた。地元の住民たちは、活気ある市場で賑やかに商品を買い求め、子供たちが運河沿いの広場で遊ぶ姿も見られる。
学者風の男性が魔法書を手にして学術区へと向かう一方、楽器を背負った芸術家たちが興行区へと急いでいた。旅の疲れを癒しにやって来た他国の旅人や、貴族らしき人物が豪華な衣装を纏い、優雅に歩いているのも目に入る。
多様な文化や背景を持つ人々が一つの都市に集まり、互いに交わりながらそれぞれの目的に向かって進んでいる。アランはこの賑わいの中で、街の国際的な雰囲気を肌で感じながら、自分もその流れの一部となって歩みを進めた。
アランは街を歩きながら、前回の魔獣との戦闘で消耗したトランクケースの魔導部分が気になっていた。そこで、首都の評判の良い魔導具店に立ち寄ることにした。店内には様々な魔導具が整然と並び、独特の魔法の気配が漂っていた。
「いらっしゃいませ、何をお探しですか?」
店主が優しく声をかけると、アランはトランクケースを手に取りながら答えた。
「このトランクケースの魔導部分が消耗していて、メンテナンスをお願いしたいのですが。」
店主はケースを丁寧に受け取った。
「なるほど、以前の戦闘でだいぶ力を使ったようですね。少し時間をいただければ、修理しておきます。」
店主がトランクケースを細かく確認しながらつぶやいた。
「ほう、収納魔法陣に、魔力保管機能、さらには魔力障壁機能まで…基礎魔法補助をかなり備えていますね。こういった古風な魔導具は、しっかりと作り込まれている分、メンテナンスにも手間がかかります。特にこう、魔力回路が複雑だと、時間をかけて調整しないと後で不具合が出ます。」
アランはトランクケースを再び見つめながら、店主の言葉に納得した。
「そうですか。急ぎではないので、しっかり直していただければ助かります。」
店主は頷きながら、ケースを慎重に扱い、奥の作業台へと持っていった。
「しっかり調整しておきますので、少し時間をください。またお引き取りの際にお知らせしますよ。」
アランは頷き、店内を見渡しながらしばらく待つことにした。
店内を歩きながら、棚に並べられた様々な魔導具を興味深く眺めた。そこには、実用的なものから少し風変わりな「ゲテモノ」と呼べるようなものまでが所狭しと並んでいる。
たとえば、運搬に便利な小型の浮遊石や、魔法を込めることで一時的に防護障壁を展開できる護符など、日常生活を便利にする実用的な魔導具が目に入る。一方で、奇妙な形をした魔導ランプは、光を発するだけでなく、使い手の感情に応じて色が変わるという遊び心のある機能を持っていた。
さらに、目を引いたのは、「笑う鏡」という名前の付いた鏡。これを覗くと、映る者が必ず笑顔になるという不思議な魔導具だった。
「こんなもの、誰が買うんだろう…」
思わず微笑みながら、風変わりなアイテムに目を奪われつつも、自分が今後使うかもしれない実用的な魔導具に関心を寄せていた。
さらに店内を見渡すと、棚の一角に、この都市ならではの最先端の研究用魔導具が並んでいるのが目に入った。これらの魔導具は、学術区で行われている魔法研究に特化した精密なものばかりで、他の地域では見かけることの少ない高価で高度なアイテムだ。
例えば、魔力の流れを可視化できる「魔力解析レンズ」や、特定の魔法元素を精密に抽出できる「元素抽出器」といった研究者向けの装置が目を引く。どれもが精巧な作りで、複雑な魔法の研究に欠かせないものだ。アランはこれらを見て、学術都市の側面もあるニウブルフの魔法技術の高さを改めて感じた。
中でも、特殊な結晶を用いた「魔法振動計」は、魔法の波動や力の強弱を測定でき、研究機関でよく使用されていると聞いたことがある。この都市が魔法学術の最先端を誇る場所であることを象徴するような魔導具がずらりと並び、店内の一角はまるで研究室のような雰囲気を醸し出していた。
しばらくすると、店主がトランクケースを持って戻ってきた。修理は完了したようで、ケースの魔導部分が綺麗に整えられていた。
「お待たせしました。トランクケースの魔導部分は完全に修復しましたよ。これでまたしばらく問題なく使えます。」
アランはケースを受け取り、その滑らかに動作する感触を確かめながら感謝の言葉を口にした。
「ありがとうございます。これで安心して次の旅に出られます。」
店主はにっこりと笑い、「どういたしまして。また何かあればいつでもお立ち寄りください」と言いながらアランを送り出した。
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