魔導書の受け渡し
次の日の朝、アランは静かに目を覚ました。宿の窓から差し込む柔らかな朝の光が、ニウブルフの新しい一日の始まりを告げていた。運河沿いはすでに活気づき始めており、朝の涼しい空気の中で人々が動き出していた。
身支度を整え、昨日の疲れを癒す宿の一夜を思い返しながら、今日の予定に思いを巡らせた。魔導書を首都の学生寮へ届ける約束を果たす日だ。荷物を確認し、準備が整ったところで、彼は宿を後にして、再び街を歩き始めた。
運河沿いには、早朝にもかかわらず学生たちが歩いており、商店は開店の準備を進めていた。ニウブルフの朝の活気に包まれながら、目的地である学生寮へ向かうため、学術区へと向かった。街の商店や屋台が開き始める中、手軽な朝食を見繕いながら学術区へと向かった。運河沿いのパン屋では、焼きたてのパンが並び、アランはその中から一つを選んで手に取り、街の景色を楽しみながら軽く食事を済ませた。
学術区に向かう道は広く整備されており、すでに多くの学生や学者が忙しそうに行き交っている。学術区に近づくにつれ、街の雰囲気は少しずつ落ち着きを帯び、知識の追求と研究に没頭する人々の静かな熱気が漂っているようだった。
待ち合わせ場所である学生寮前の噴水に到着すると、周囲は静まり返っていた。朝早くから用事がある学生たちはすでに出払っているのか、寮の周りはひっそりとしていた。噴水の静かな水音が心地よく、アランはそのそばにあるベンチに腰掛けて本を抱えながら、依頼人が来るのを待っていた。
しばらく待っていると、依頼人の学生が急ぎ足でやってきた。息を整えながら、少し慌てた様子でアランに声をかける。
「お待たせしました!依頼を受けてくださってありがとうございます。」
アランは微笑みながら本を持ち、立ち上がって学生に応じた。
「大丈夫ですよ。無事に到着できて何よりです。それでは、早速魔導書をお渡ししましょう。」
学生は魔導書を受け取った後、深く頷き、アランに向かってしっかりとお辞儀をした。
魔導書を受け取った学生は、目を輝かせながら「本当にありがとうございました!」と一言残し、研究に戻るためにそのまま走り去っていった。彼の後ろ姿を見送りながら、アランは学生の熱意に感心しつつ、静かな学術区の空気を再び味わっていた。
アランは、学生が走り去った後、せっかく首都ニウブルフに来たのだから、少しの間、滞在してみようと思った。学術区の静かな雰囲気に浸りつつ、何をしようかと考えを巡らせた。首都には見所がたくさんあり、商業区での買い物や、学術区での研究施設の見学、さらには芸術祭や音楽のイベントにも足を運べそうだ。ゆったりとした時間を楽しみながら、首都での滞在を充実させる計画を立て始めた。
しばらく首都での滞在計画を考えていると、風に乗って一枚のチラシがひらひらと空中を舞い、足元に落ちてきた。何気なくそのチラシを拾い上げてみると、そこには「魔導学シンポジウム開催!」と大きな文字が書かれていた。日付は明日から数日間にわたって開催されるようで、学術区内の複数の講堂で最新の魔法理論や技術についての発表が行われることが記されていた。
「これもいい機会かもしれないな…」
アランは興味深そうにチラシを眺めながら、滞在中の予定にこのシンポジウムの見学を加えることにした。
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