森の魔獣、再び

 準備を終え、アラン、エデル、ベルタ、ノアの四人はストロメンドの森へ向かって出発した。街道はフリシータでのフェスが近づいているため、多くの人々が行き交い、賑やかな雰囲気が漂っていた。商人や旅人、そして祭りに向けて準備を進める住民たちが街道を賑わせていた。


 しばらく進むと、前方から何人かの人々が慌ただしくフリシータへ向かって駆け込んでくるのが見えた。その表情には焦りと恐怖が浮かんでおり、何か異常事態が発生していることを察した。


 エデルが鋭く目を細めながら声をかける。


「おい、何があった?」


 その中の一人が息を切らしながら、慌てて答えた。


「街道に突然、魔獣が現れたんです!何人かが襲われている!私たちは逃げてきましたが、他の人たちがまだ……」


 エデルは険しい表情で仲間たちを見回し、すぐに判断を下した。


「急ぐぞ。アラン、ベルタ、ノア、準備はいいか?まずは襲撃を止めることが優先だ。」


 ベルタがすぐに杖を構え、「もちろん!」と力強く答える。ノアは無言で頷きながら、前方の様子を確認するように目を鋭く光らせていた。


 その場に駆けつけると、数人の冒険者が魔獣に応戦していた。しかし、彼らはギリギリの状況で、今にも押し負けそうな雰囲気だった。魔獣は大型で、黒い体毛に覆われた恐ろしい姿をしており、まぎれもなく以前にあった魔獣であった。魔獣は力強い動きで冒険者たちを圧倒していた。


 エデルが素早く状況を把握し、ベルタに指示を出す。


「ベルタ、まずは距離を取らせろ!」


 ベルタは即座に杖を掲げ、火の魔法「メディグニス」を唱えた。魔獣と冒険者の間に炎の魔法が炸裂し、大きな爆発が起こった。爆風とともに熱が辺りを覆い、魔獣は一瞬の間、動きを止め、冒険者たちとの間に距離ができた。


「いくぞ、アラン!」


 エデルが指示を飛ばす。


 アランはすぐに魔法を使い、エデルを押し飛ばした。エデルは素早く間に入り、魔獣を冒険者たちから遠ざける。魔獣が再び動き始める前に、エデルがその巨体の前に立ちはだかり、剣を構えた。


「ここは俺たちが引き受ける!今すぐ下がれ!」エデルが冒険者たちに呼びかけると、彼らはその言葉に従い、安全な距離へと退避した。


 そのあと、アランもエデルの元へと駆けつける。剣を構えるエデルの隣に並び、二人は連携して魔獣に立ち向かう準備を整えた。


 ベルタはその後方で、魔法の準備を整え、いつでも援護に入れるように構えている。ノアも周囲の警戒を怠らず、素早い動きで戦場全体を見渡していた。


 四人は、冒険者たちを救出し、素早く陣形を整え、魔獣に立ち向かった。エデルが魔獣の前に立ち、剣を構えたことで、その巨大な体がこちらに注意を向けた。魔獣の目には怒りと凶暴な光が宿っており、彼らに向かって襲いかかろうとしていた。


 エデルが低く構えながら、アランに声をかける。


「アラン、俺がこのまま前線を引き受ける。支援を頼む!」


 アランはすぐに頷き、魔法の準備も整えて、必要に応じて素早く動けるようにする。


「わかりました。」


 ベルタもその後方で再び「メディグニス」の火球を練り、再度の爆発を起こす準備をしていた。彼女の目は集中しており、魔獣の隙を探している。


 一方、ノアは少し離れた場所で魔獣の動きを観察していた。彼の鋭い視線が、周囲の地形と魔獣の動きを細かく捉えている。警戒心を緩めることなく、いつでも援護に回れるように身を構えていた。


 エデルが剣を振り下ろし、魔獣との本格的な戦闘が幕を開けた。彼の鋭い剣戟が素早く魔獣の巨体を狙い、剣が風を切る音が響く。しかし、魔獣はその攻撃を巧みに体を翻してかわし、次の瞬間、反撃の態勢に入った。次の瞬間、魔獣の鋭い爪がエデルに迫る。しかし、そこへアランが間に入り攻撃をはじいた。


「ナイスだ、アラン!今だ、ベルタ!」


 エデルが叫ぶ。


 ベルタが掛け声に合わせ、火の魔法を放つ。轟音とともに火の球が魔獣に直撃し、再び爆発が巻き起こった。魔獣が一瞬の混乱に陥る。


「畳みかけるぞ!」


 四人は連携し、魔獣を倒すために全力を尽くして攻撃を繰り広げた。エデルが剣で前線を押さえ、アランが素早く支援、ベルタの魔法が次々と炸裂し、ノアが敵の隙を逃さず細かく弓矢で攻撃する。彼らの連携は完璧で、魔獣は徐々に追い詰められていった。

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