冒険者ギルド エニブール

 アランとレンブラントは冒険者ギルド「エニブール」に到着すると、その重厚な石造りの建物が朝の静けさの中にそびえ立っていた。フリシータの街でもひときわ目立つ存在であり、外壁には歴史を感じさせる補修の跡が残っている。冒険者たちが日々集い、護衛や討伐、探索など様々な依頼に挑むこの場所には、数え切れないほどの物語が積み重ねられてきた。


 ギルドの中に入ると、朝のためかそれほど混雑していないものの、所々に冒険者たちがいた。輸送の護衛や討伐依頼から帰ってきた者たちが、受付に報告をしていたり、簡単な朝食をとったりしている。その他、今日行う依頼を吟味している者たちの姿も目に入る。


 レンブラントは受付に向かい、すぐに要件を告げた。


「ストロメンドの森で魔獣の襲撃がありました。緊急の依頼としてギルドマスターに伝えていただけますか?」


 受付の女性はレンブラントの顔を見てすぐに事態の深刻さを察したようだ。彼女は頷くと、すぐにギルドマスターを呼びに向かった。普段から護衛や討伐依頼で冒険者ギルドとは連携を取っているのだろう。


 しばらくすると、ギルドマスターが姿を現した。力強い体格と冷静な目つきを持つ、歴戦の冒険者らしい風格を纏った男性だ。


「レンブラント、また危険な事態が起きたようだな。何があった?」


 ギルドマスターは、アランに目を向けた。


「初めましてかな?俺はディラン。ここ、エニブールのギルドマスターをやっている。森で何かあったら俺に報告が来るのが常だが、今回は急ぎのようだな。状況を詳しく聞かせてくれ。」


 レンブラントと軽く挨拶を交わし、アランと握手をすると、話を本題に戻した。


「ストロメンドの森で魔獣の襲撃、か……。実は最近、噂程度ではあるが、同じような報告がいくつか入ってきていたんだ。森の主とされる魔獣が動いているという情報だが、これまでは具体的な被害が確認されていなかったため、確信は持てなかった。」


 ディランは眉をひそめ、深く考え込むように言葉を続けた。


「ただ、今回の件で事態が本格化したことは明らかだ。魔獣の行動が普段とは異なっているのは確かだし、これ以上放置するわけにはいかない。今回の報告を受けて、すぐに討伐に向かうパーティーを決める必要があるな。」


 ディランは素早く手配を進めるべく、近くの係員に指示を出した。

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