第2話 わたしの先は長くない
午前中はねんがんの図書館で時間をすごした。
いろんな本があった。とても楽しかった!
たくさん本を借りた。もうやしきでも寂しくないだろう。
「昼食はなにを食べたい?」
「決めさせてくださるのですか?」
普段はえいよーがどうのこうのなどと、よくわからないことでだめって言われるのに。
好きなものを食べたいけれど、今日は本当にどうしたのかな。
「ああ、今日は特別だ」
「ありがとうございます!」
今日は特別なんだって! なにを食べようかな?
「ねえリエ。なにがいいと思う?」
「お嬢様がお召し上がりたいと思うものでよろしいのですよ」
「たくさんあるもの。1つに決められないわ」
「ならばセレビュアン、ナルメリッドン、サピンレン、ガバーンラリスンのどれがいいですか?」
どれも捨てがたいけれど………。
「ナルメリッドンにするわ」
「じゃあ私がすすめるナルメリッドン料理の店に連れていこう」
「楽しみです!」
ばしゃに乗ってほどなくしてそのお店に着いた。
てまえのこしつに通されて父からメニューをわたされた。とてもなやむ。
「どうしようかな………」
「私のおすすめはね…」
「ケイリー様?」
父のそばづかえが呼びかける。
「そうだったね、すまない。ミュラーの好きなものを頼めばいいよ」
「そうですか………?」
やっぱりえいよーどうのこうのがあるんじゃないかな。
「そんなに不安がるな。今日は特別なんだから」
父がほほえみを向ける。
今日は特別。うんだよね。きっとおとうさまも浮き足立っているんだわ。
「はい!」
けっきょくピザとパスタを頼んだ。
父にそんなに食べられるわけないと言われたけれどおしきった。
よそー通り食べきれなくて、怒られた。
かんけーないリエが謝っちゃう前に謝った。かのじょは優しいからね。
食べ終わって、つれていかないといけない場所があると言われた。
わたしにとってはいやかもしれないって。
でもおとうさまがそう言うんだからいやでも行かなきゃね。
ちょっとだけ怖い。
父も母もとてもやさしいから、わたしがいやがるかもしれないことはできるだけさけるようにしてくれている。
それでもつれていく必要があるところなんて考えたら………怖い。
父や母のやさしいところは好きだけれど、とても申し訳ない気持ちになる。
たぶんわたしは負担なんだろう。
「ここだよミュラー。………どうした?」
「ううん………」
いやがったらわたしはもっと負担になってしまう。
「おとうさま、ここはどこですか?」
「今からミュラーのどこが悪いのか調べてもらうんだよ」
病院。たしかびょーいんっていうんだ。ゆめの中でおねえちゃんがいるところ。
「わかりました」
いやな気持ちと怖い気持ちで混ざり、久しぶりに父の手をにぎる。
中に入った。
いろんなまどーぐでけんさを受けているうちに4のかねが鳴った。
終わるころにはとても疲れていた。
がんばってたえているうちに“しんさつしつ”という部屋に通された。
「お久しぶりです、ハイカル男爵卿」
「この度は本当にありがとうございます、テンタルト子爵卿」
「いえいえ、あの節はわが愚息が世話になりました。少しでも借りは返していかなければ」
「お手伝いができたようでなりよりです」
「はっはっは。こちらがご令嬢の?」
「ええ、次女のミュラーといいます。挨拶は?」
父とおいしゃさまの会話はよくわからなかったけれど、父にあいさつを促されていることだけはわかった。
「おはつにお目にかかります、ハイカル男しゃくが次女、ミュラーともうします」
立ち上がりつたないカーテシーを披露する。
この病気が治ったらもっときれいにできるようになるといいな。
「ご丁寧にどうも。お初にお目にかかる、モルンガ・テンタルトだ。お父上の友人だ」
「はい………」
「では本題に入りますよ、閣下」
「ええ、娘の病は………」
「はっきり言います。今の魔術・医学では治すことはできません」
ーやっぱり、治らないんだ。
あ、これ………ゆめのおねえちゃんの声だ!
「本当にゼロなんですか!?」
「………適当なことは言えませんよ」
「可能性があるなら教えてください」
父は引き下がらない。
「使い手がいるかは分かりませんが」
おいしゃさまは重いかおつきでつづける。
「光属性で最も難易度が高い魔法でならあるいは。
………ですが、私の知っている限りそんな高名な魔術師はいません」
「そうですか………。
ではもし治せなかったときの………残りの寿命は?」
「先は長くないでしょう」
ーまたか………。
ゆめのおねえちゃん? またってどういう?
「何歳まで生きられますか?」
「成人できるかあやしいですね………」
ー今世でも成人できないのか。
………!?
あぁ思い出した。
“ゆめのおねえちゃん” は、前世の私、つまるところ前世の記憶。
私は転生者で、16で病気で死んだんだ。
前世の記憶が5歳の頭に濁流のように押し寄せ、逃げるように気を失った。
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