第8話 中国地方知事会との協力と対立

西郷健一郎は、島根県の発展には中国地方全体との協力が欠かせないと考えていた。特に隣接する鳥取県とは、産業や観光、交通インフラで多くの共通課題を抱えていた。これを解決するために、西郷は鳥取県を含む中国地方知事会との連携を模索することを決意した。


ある日、西郷は中国地方知事会が開かれる広島市へと向かった。会議には、広島県知事をはじめ、鳥取県、岡山県、山口県の知事たちが集まり、中国地方の未来について議論が交わされる予定だった。


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会議の会場に到着すると、鳥取県知事の山根弘毅が西郷に近づいてきた。


「西郷知事、ようこそ。最近、島根での動きが大きな注目を集めているようですね」


「おかげさまで、何とか県庁移転や公共事業の話が進んでいます。しかし、鳥取とも連携して山陰地方全体を発展させていく必要があります。今日はその話をぜひ聞いていただきたい」


山根知事は頷きながら、西郷の言葉に耳を傾けた。


「確かに、山陰地方の経済や交通インフラには課題が山積しています。鳥取と島根が協力すれば、より強力な基盤を築けるはずです」


その後、西郷は会議室に入り、中国地方の知事たちとの会議が始まった。議題は各県の現状報告と、今後の連携についてだった。


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「島根県としては、出雲市を中心に交通インフラの整備を進めていく考えです。山陰新幹線の延伸や、道路網の拡充を通じて、島根全域のアクセスを向上させたい。これにより、鳥取との連携も強化され、観光や物流の活性化が見込まれます」


西郷の発言に対して、広島県知事の中山隆志が意見を述べた。


「新幹線の延伸は確かに大きなインパクトを与えますが、それだけで地方の課題が解決するとは限りません。広島や岡山のような都市部との連携も不可欠です。山陰地方だけに頼るのではなく、山陽との接続をどう強化していくかが重要です」


西郷は頷きながらも、次のように応じた。


「おっしゃる通りです。しかし、まずは山陰地方内での交通網を整備することが必要です。特に、鳥取県と島根県の連携が強化されれば、山陽への接続もスムーズに進むはずです」


山口県知事の松下健一も発言した。


「山口県としても、新幹線の延伸や道路網の整備には関心があります。しかし、財政的な問題が常に課題です。どうやってそれをクリアしていくのか、具体的な計画が必要です」


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会議が進む中、西郷は藤堂悠一の存在が気になっていた。彼の影響力がどこまで及んでいるのか、そしてこの会議でも中央政府との軋轢が生じる可能性があることは承知していた。


会議終了後、鳥取県知事の山根が再び西郷に近づいてきた。


「西郷知事、我々は鳥取と島根が一緒に発展することを望んでいます。しかし、中央政府の藤堂氏の影響力は無視できません。彼が山陰新幹線の計画に反対していることはご存じですか?」


西郷は少し驚きながらも冷静に答えた。


「もちろん、藤堂の動きは把握しています。だが、私はこの計画を諦めるつもりはありません。島根や鳥取、そして中国地方全体が一丸となれば、中央政府の圧力に対抗できるはずです」


山根は少し微笑みながら、「あなたの決意には感心します。しかし、これからが正念場です。お互い、協力して乗り越えていきましょう」と手を差し出した。


西郷はその手を握り、心の中で決意を新たにした。山陰地方の未来を切り拓くためには、鳥取だけでなく、中国地方全体との連携が不可欠だ。そして、藤堂との対立がさらに深まることも予感していた。


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その夜、西郷は広島のホテルで次のステップを考えていた。奥出雲町や出雲市だけでなく、島根全体、さらには中国地方全体を発展させるためのプランが頭を巡っていた。新幹線計画、道路網の整備、そして藤堂との戦い。やるべきことは山積していたが、彼は一歩一歩進む覚悟を決めていた。

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