少女は覚悟を決める(1)(修正)
魔法――それは、少女にとってただの力ではない。
それは彼女の信念そのものを映し出し、幾度も自分自身を守り、また周囲に優位をもたらしてきた力の象徴。だが、魔法が支配するこの世界では、ただ優れた魔法の子だけが栄光を手にできる。頂点に君臨する
一方で、落ちこぼれと見なされた者にとって、この世界は残酷そのものだ。
才能や血統、そして
ライラは、その冷酷な現実を知っている。それでもなお、彼女は足掻き続けてきた。
だからこそ、養成学校の温室に留まることを良しとせず、命を刈り取るダンジョンという恐怖の場所に自ら足を踏み入れた。
「自分が一番努力している」と信じ、それが揺るぎない彼女の誇りだった――少なくとも、今までは。
だが、目の前に広がる現実が、彼女の信念を根本から揺さぶる。
魔法に否定された少年――
彼は剣一本だけを武器に、ライラたち仲間を守るため命を賭けて戦っている。その姿に、ライラはこれまで抱いてきた感情の薄さを痛感した。彼がどれだけの勇気と意志を持ち、何を背負って戦っているのかを直視したとき、胸が締め付けられる感覚に襲われた。
「……私もやらないと」
自然と、言葉が口をついて出た。
「……え?」
仲間たちは困惑する。逃げるべきだという思いが、全員の胸中にあったからだ。
だが、ライラの声には明確な決意が宿っている。
「シャーロンさん、ノーゼンさん、ユリーラさんを頼みます。彼に全てを押し付けて、尻尾を巻いて逃げるなんて、そんな情けないこと、私はできません」
彼女はそう言い残し、杖を握り締めて駆け出す――仲間たちが声を掛ける間もなく。
ブランの視界は霞み、全身に容赦ない痛みが襲う。
魔力を脚と腕、そして刀剣に巡らせ、ただ目の前の敵を斬る。それだけが、彼に許された行動だった。
「……くそっ!」
鋭い刃が魔物を次々に切り裂き、血飛沫が戦場を染める。だが、次から次へと湧き上がる魔物たちの猛攻に、限界は刻一刻と近づいていた。
「……まだ……」
ぼやける意識の中で、彼はそれでも立ち上がろうとする。
だが、膝が一瞬折れる。その一瞬の隙を魔物は逃さない。
バキッ
何本かの骨が折れる。
その感覚が、音が耳に反芻する。
魔物の打撃で背中に走った激痛が視界を真っ暗に染める。
そんな状況ですら、ブランの心はあの男の仲間たちを逃すことだけを考えていた――そのとき。
「切り裂く風よ、刃となりて敵を貫け――!」
凛とした声が戦場に響く。
「……風の魔法?」
咆哮を上げて襲いかかろうとした魔物たちを、無数の風の刃が切り裂いていく。次々と血を撒き散らしながら倒れる魔物たち。
その魔法を放ったのは――ライラだった。
「どうして君がここに……」
ブランのかすれた声に、ライラは淡い笑みを浮かべながらも、真っ直ぐ前を見据えた。
「……伝えたいことがあったんです。私は今まで……ずっとあなたを助けず、ただ傍観していただけの人間でした」
そう言いながら、ライラは再び杖を振る。緑色の魔力の渦が周囲に広がり、さらに強力な風刃が魔物たちを貫いていく。
「でも、こんな酷い状況になってようやく気づきました。あなたがどれだけ努力を重ねているのかを。そして、私はずっと――その姿を見ていただけだったことに」
淡黄色の瞳に宿るのは、迷いのない強い意志。ライラの言葉は次第に力強さを増していく。
「だから、これからは違います。私はただの傍観者ではいられない。私も……誰かのために、自分の全てを懸けて戦いたいと思う」
彼女の瞳には、かつての弱さを一切感じなかった。
彼女の言葉に信念が宿っていた。
だからこそ、心からの感謝を込めて、ブランはうなずく。
「……ありがとう。君の力を借りれば、きっと乗り越えられる」
二人の意志が重なり、戦場の空気が変わる。
風の刃が魔物を切り裂き、白く輝くブランの刀剣が敵を次々に打ち倒していく。
絶望の渦巻くダンジョンの戦場で、二人の意志が共鳴する。その刃が、希望を照らす光となって――新たな物語の幕が上がった。
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まず初めに、私の拙い文章を読んでくださり、ありがとうございます。
ゆっくりと書いていく予定です。
時々修正加えていくと思います。
誤字脱字があれば教えてください。
白が一番好きな色。
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