死へと誘う夢の場所(4)(修正)

フロアⅢ――形状自体はフロアⅡと大差ないが、この場所は全てが違っている。


ここに出現する魔物は、危険度Ⅴに指定された魔物ばかり。

魔法耐性を持ち、知性すら感じさせる行動を取る彼らに、力押しの魔法は通用しない。それどころか、未熟な魔法はかえって命を縮める要因となる。この地では、挑む者すべてが生と死の境界線で踊らされる。


ブランは階段を降り、広がる洞窟を目にした。

暗い空間を進むと無数の足跡と血痕を確認する。これらが片腕を失った男の仲間たちの行方を示しているようだった。


――スタンピード。


ダンジョンに潜む魔物が一斉に湧き出し、殺意の渦が広がる異常現象。

音もなく漂う異様な空気の中で、ブランは奥へと足を進める。


「……嵐の前の静けさか」


そう呟いた瞬間、洞窟の奥から悲鳴と衝突音が轟く。

胸が一瞬で跳ね上がった。恐怖が身体を硬直させそうになる。だが、ブランは剣を強く握り、意識を集中させた。


「急がないと……!」


洞窟の壁が次第に狭まり、視界が暗闇に包まれる中、ブランは洞窟の奥に気配を感じ取る。そしてその先には、異様に広い空間が広がっていた。


天井が高く、どこまでも続く広間。その中央には、魔物に囲まれた人影があった。

男の仲間たちだ――必死に抗いながらも、完全に押し込まれている。


ブランは深呼吸をし、魔力を剣に流し込む。次第に輝きを放つ白刃が、彼の心を奮い立たせる。






どこまでも続く広間の中央。

その場所で、ユリーラ・マギルーフは必死に戦っていた。


「どうしてこんなことに……」


フロアⅢ――何度も訪れ、熟知したはずの場所。ここで仲間たちと共に研鑽を重ね、フロアボスだって討伐したこともある場所。

しかし、今は――


知性を持つかのような動きの魔物たちが、彼女たちを容赦なく追い詰めていた。


魔物の数は多く、その力はいつもと比べものにならないほど圧倒的だった。仲間たちは疲労と負傷により動きが鈍り、死の淵へと立たされていく。


「このままじゃ、全滅する……!」


大量発生スタンピード――それは、想像を超えた規模の異常現象だった。

魔物の猛攻に、ユリーラの心も徐々に絶望に染まっていく。


その時、隣で戦っていた少女、ライラが震える声で呟いた。


「……死んじゃう……このままじゃ……死んじゃう……」


その言葉が、ユリーラの胸に重く響く。

避けられない『死』という未来。その現実が目の前に迫っていた。


それでも、ユリーラは歯を食いしばり、少女の肩に手を置いて言葉をかける。


「大丈夫。まだ生きてる――まだ戦える」


その言葉は目の前の少女に向けたのか、自分へと向けたのか。

言葉を振り絞り、目の前の魔物に向けて魔法を放つ。しかし、その一撃も敵の硬い外皮には通用しない。


次から次へと押し寄せる魔物たちの波。その猛攻を受け続ける中、ユリーラの身体は限界を迎えようとしていた。


焦燥感と恐怖が彼女を支配し始める。


そして――


「ユリーラさん、逃げて!!!」


ライラの悲痛な叫びが響く。

巨大な棍棒を振りかぶる暴牛の魔物が、彼女に向けて死への一撃を繰り出す。


「……あっ」


その光景を見つめる彼女の瞳に、確かな死が映った。

魔法を展開する時間も、回避する余裕もない。


すべてが終わる――そう感じた刹那。



轟音が広間に響き渡り、地面が粉々に砕け散る。

その音に、誰もがユリーラの死を悟った。

だが――


「……ぎりぎり間に合った」


冷静な声が広間に響く。


振り向いた仲間たちの目に映ったのは、気を失ったユリーラを抱きかかえる白髪の少年。


彼の腰に帯刀された剣。その純白の輝きが、絶望に満ちた広場を小さく照らす。



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まず初めに、私の拙い文章を読んでくださり、ありがとうございます。

ゆっくりと書いていく予定です。

時々修正加えていくと思います。

誤字脱字があれば教えてください。

白が一番好きな色。

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