拒絶される色彩(2)

――魔力なくして人にあらず、人でなくして魔法にあらず。魔力さえあれば、人はどんな魔法でも必ず構築できる。


「そんな言葉を世へと残した魔法の始祖のおかげで、人は時代を築き上げることができたのです」


教室に響き渡るのは、教授の声とチョークが黒板を走る音。

彼女の声に合わせるかのように、浮かんだチョークが黒板に文字を描き出していく。

その文字をノートに書き写す生徒もいれば、ただ聞き流している生徒もいる。

中には、ノートを取ることもせず、教授の話す内容さえ右から左へと受け流し、窓の外に視線を向けている生徒もいた。


「魔法使いの象徴とされる伝説的魔法使いウィザード、マーリン・ヴァン・オルテッド。皆さんも原初の魔法使いという名で覚えていることでしょう」


若き未来ある魔法の卵たちは、智慧と見識を深めるために、六年間をかけて原初の魔法使いが築き上げた魔法の礎を学ぶ。

ここはブランが通っている養成学校、ウェストム魔法学校。

今、彼が座っているのは、魔法歴史学の講義室だ。

階段式に配置された机と椅子が並ぶ教室の中心席で、ブランは筆記をしながら教授の話に耳を傾けていた。


「人となる身で初めてへと昇華させたマーリン・ヴァン・オルテッドは、この世に数多の偉業を残していきました」


マーリン・ヴァン・オルテッド。

彼は、魔法が世界を支配する時代を築くと同時に、アルトゥス・マギアデスの始まりでもある存在だった。


「五つの属性魔法を構築できた者は、長きにわたる魔法の歴史の中でも、彼一人だと言われています」


拒絶の対象と対をなすのは、祝福の対象。

魔法から拒絶された者を『世界に否定された魔法の子マギアス・ネガティオン』と呼ぶように、魔法の祝福を受けた者を、人々は『世界に愛された魔法の子アルトゥス・マギアデス』と、そう呼んだ。


魔力の器によって、魔法の技量は確定する。

器が大きければ大きいほど、より多くの魔力をその身に蓄えることができ、さすれば、上位魔法や高位魔法を構築することも可能にするからだ。


そんな莫大の魔力を内に宿す世界に愛された魔法の子アルトゥス・マギアデスには二種類の者が存在する。

一つ目は、莫大な魔力を宿したことで、その本質を極めた者。

二つ目は、本来なら一色しか与えられないはずの魔法の色彩を、複数併存させている者たちであった。


「最も魔法から愛された世界に愛された魔法の子アルトゥス・マギアデスであった彼だからこそ、数々の偉業を成し遂げたのでしょう」


与えられた一色の魔法を究極のものへと変化させた者と、複数の魔法の色彩を併存させた異例の者。マーリン・ヴァン・アルフテッドは、歴史においてその二つの特性を世界から与えられたと記されている。


ブランは動かしていた手を止めて、息を吐いた。

ふと時刻を確認すると、長身の針は十四時を指していて、あと二十分もすればこの魔歴学の講義も終わりを迎える。


視線を外へと向けた。

窓に映る光景は、屋上で見たものと変わらない景色。


――…世界に愛された魔法の子アルトゥス・マギアデスか。


心の中でそう呟いたのは、それに当てはまる存在の事が思い浮かんだからだ。


今ではもう遠い存在へとなった存在。

そんな彼女と共に過ごした幼少期の記憶が、次々と脳裏に浮かんでくる。


ブランが思い浮かべたのは、幼馴染であった一人の少女だった。







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まず初めに、私の拙い文章を読んでくださり、ありがとうございます。

ゆっくりと書いていく予定です。

時々修正加えていくと思います。

誤字脱字があれば教えてください。

白が一番好きな色。

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