拒絶される色彩(1)
「その生意気な目がむかつくんだよ、
強引に胸ぐらを掴まれては、突然と突き放される。頬と背中に激しい衝撃が走った。思わず尻餅をついてしまうと、彼らはすっきりしたのか舌打ちを残し、屋上から離れていく。彼らの姿が遠ざかる中、ブラン・アルフテッドは痛む頬と背中を感じながら、壁にもたれかかって座り込んだ。
――またこれか。
理不尽に文句を言われ、殴られ、突き飛ばされる。
これらは受け入れるしかない、世界から拒絶された存在が辿る宿命。
これまで何度も経験してきたことで、もはや慣れてしまったことのひとつだ。
「…いてっ」
頭を壁に預け、横唇に指を添えると、指先には血がついていた。
溜息をつきながら、そのまま空を眺める。
視界に広がるのは、風に流されていく雲たちという、至極当たり前の光景だった。
「…当たり前、か」
平凡なことができない者は、嫌われ、避けられる。
だからこそ、平気で暴力を振るわれ、無視される。
何もできない存在に対して、人々は簡単に冷酷になれるのだ。
その現実をブランは知っていた。
「だからこれは仕方のないことなんだ。そうだろ?ブラン・アルフテッド」
自分にそう言い聞かせる。
魔法を行使できないということは、当たり前のことではなく、世界から見ても異常な事態なのだから。それが自身が望んでいたわけではなく、世界から強制されたことだとしても、だ。
――息を思いっきり吐くんだ、心を落ち着かせろ。
これは割り切らなければならないこと。
そう理解しているからこそ、ブランはあの三人に殴り返すなんてことはしなかった。
魔法が世界の全てを支配しているこの世界で、魔法を行使できない者たちがどのように扱われるかは、火を見るよりも明らかだった。
「ここにいるのは何のためか」
全ての支出を上層部が負担する代わりに、子供たちは十六歳になるまで必ず魔法学校に通う義務がある。
これは魔法の基盤となる初級から中級魔法、そして魔法に対する知識を身に着けるためだ。
法にもそう定められている。
「ヴィオレの為だろ」
ヴィオレ・アルフテッド――ブランの妹であり、彼がこの世で最も大切に思う存在。たとえ自分が世界から否定されても、妹を救うためならどんな仕打ちにも耐えられる。そう決意して、ブランはこの場所に来ていた。
彼はもう一度深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
授業の三分前を知らせる鐘の音が学校中に響き渡る。
――次はヴィオレが好きな魔歴学の授業なはず。
彼は魔法の知識を学ばなければならなかった。
それは妹のため、そして幼馴染と交わした約束を果たすため。
「無能の色を宿しても、果たさなければならないんだ」
ブランはもう一度、空を見上げた。
「ヴィオレの病を治すために、クレアとの約束を守るために」
そう小さく呟いた彼の言葉は、空へと消えていく。
彼は立ち上がって、屋上から姿を消した。
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まず初めに、私の拙い文章を読んでくださり、ありがとうございます。
ゆっくりと書いていく予定です。
時々修正加えていくと思います。
誤字脱字があれば教えてください。
白が一番好きな色。
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