魔法至上主義なこの世界で無能が魔法使いを夢見ることは罪ですか?
@ggaa
世界から否定された魔法の子(1)(修正)
もし誰もが魔法を行使することが当たり前な世界で、魔法を使うことができない存在がいたのなら、その者はどのような人生を歩むだろうか。
同情、軽蔑、侮蔑、差別──それは耐えがたい屈辱と絶望に満ちた人生を歩むことになるだろう。理解されることなく、ただ拒絶され続ける日々。その状況をもたらしたのは、決して当人の過ちではなく、単に生まれつき魔法の「力」を持たなかったというだけなのに。
「その生意気な目がむかつくんだよ、
鋭い言葉が飛んできた直後、ブラン・アルフテッドは無理やり胸ぐらを掴まれた。反論する間もなく、強引に突き放され、頬と背中に激しい衝撃が走る。気がつけば、尻餅をついていた。
目の前に立つ三人の少年たちは、満足そうに嘲笑を浮かべると、屋上の出口へと向かう。去り際に聞こえる舌打ちが、心に刺さる。
残されたブランは、痛みを堪えながら壁に寄りかかる。
――またか。
殴られ、罵倒され、突き飛ばされる。そんな理不尽な仕打ちは、彼にとって日常だった。いつしか、痛みにさえ慣れてしまうほどに。
「…いてぇな」
呟きながら、傷ついた頬を指先で拭う。血のついた指を見て、彼は深く息を吐いた。
見上げた空には、風に流される白い雲。平和そのものの景色が広がっている。
「平凡な世界ってやつか…」
自嘲気味に呟く少年。その「平凡」から最も遠い位置にいるのが、彼自身だった。
この世界では、「魔法」が人間の価値を決定づける。生まれ持つ魔法の力がすべてを支配する社会で、魔法を一切使えない彼は「無価値」と見なされている。
だからこそ、先ほどのような暴力も当たり前のように振るわれる。それを許容するのが、この世界の冷たさだった。
「……これは仕方のないことだから」
そう自分に言い聞かせるように呟く。だが、その言葉の背後には、抗いようのない孤独が漂っていた。
屋上に響いた鐘の音が、現実へと引き戻す。授業が始まる三分前を告げる鐘だ。
彼は、ゆっくりと体を起こしながら空を見上げた。
「ヴィオレのためだ」
彼の視線が一瞬、どこか遠くを見つめる。ヴィオレ・アルフテッド――彼の最愛の妹。その妹は、幼いころから魔法の暴走による病に苦しんでいた。
たとえ自分が「無価値」とされても、ヴィオレを救う方法を見つけるためなら、どんな仕打ちにも耐えられる。彼の決意は、そのためだけに存在している。
「…それに、クレアとの約束もある」
懐かしい幼馴染の名前が口をつく。彼女との約束――魔法使いの誓いを叶えること。それが、ブランのもう一つの支えだった。
「無能だろうと、この誓いだけは果たさないといけない」
再び立ち上がり、今度はしっかりと足元を踏みしめる。屋上を後にしながら、彼は一度だけ空を見上げた。
「ヴィオレを救う方法を、必ず見つけてみせる」
呟いた言葉は空へと消え、ブランの背中は屋上のドアの向こうへ消えていった。
世界は数多の「色」で溢れている。
大地には黄土や赤土の色彩が、大海には美しき青の色彩が、夜空には無数の星々が様々な色彩を宿している。魔法もまた、それらと同じように色とりどりに彩られている。
そんな世界で、魔法を構築することができない存在——人々はそれを
数多の色によって彩られた魔力。
その色が、魔法を構築するための鍵となる。
朱の色彩は炎の魔法を、蒼の色彩は水の魔法を、黄の色彩は雷の魔法を、緑の色彩は風の魔法を、橙の色彩は土の魔法を生み出すように、宿す色によって構築できる魔法が変わっていく。
そんな色彩が溢れた世界で、拒絶された魔法の色が存在した。
それは空っぽな魔力色素と呼ばれた、無価値の象徴。
「無」を表す白き色彩、「壊」を表す黒き色彩──それは世界を混沌に陥れる拒絶の色彩。
これは、そんな世界から拒絶された色彩をその身に宿した一人の少年が魔法の覇者——『魔法使い』へと成り上がる物語だ。
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まず初めに、私の拙い文章を読んでくださり、ありがとうございます。
ゆっくりと書いていく予定です。
時々修正加えていくと思います。
誤字脱字があれば教えてください。
白が一番好きな色。
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