君と私

君の過去を聞いてから関わりは減った。私が考える時間が欲しかったから。あの場所に行かず、私が君にできそうなことを必死で考えた。でも、わからなかった。だから君に直接聞こうと思って久しぶりにあの場所へ行った。君は変わらずそこにいて、私を見つけると「もう来てくれないかと思った。」なんていうから「そんなわけ無いでしょ。」とだけ返しておいた。少しそっけなかったかもしれないななんて思いながら本題に入った。「私は君に何ができる?」と尋ねれば君は「もう十分してもらったよ。」と微笑んでいうから不思議に思って「例えば?」と聞いた。すると君は「一緒にいてくれたこと、遊んでくれたこと、過去を知っても離れて行かないでくれたこと、憐れまなかったこと、非難しなかったこと。」などたくさん言ってくれた。私は不思議だった。何故ならそれらは全て私にとって当たり前のことだったからだ。好きな人と遊びに行きたいと思うのも一緒にいたいと思うのも。それに過去を聞いたぐらいでは離れようなんて思わない。たとえそれがどんなに重くても私は受け止める。憐れまないのは憐れんでほしくないだろうなと思っているからだし、非難しないのは君が何も悪いことをしていないから。それを君に伝えると「そういうところ好きだよ。」と言われた。恋愛的な意味じゃないだろうけど私は自分でもわかるぐらい真っ赤になってしまった。そんな私を見て君は初めて年相応の笑い方を見せてくれた。初めて出会ったときとは比べ物にならないくらい縮まった距離。この距離が更に縮まるか、変わらないかは私の行動次第だと思う。でも、案外そう遠くない未来で君と私が隣り合って笑っているかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君は陽炎 倉木 友 @tdrk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る