幕間
「ねえねえ悠斗君、今日授業サボっちゃおうよ」
朝比奈さんがベッドの上で俺に抱き着きながら上目遣いでこちらを見つめる。
意外なことに寝起きの朝比奈さんはかなり面倒くさがりで、一限がある日なんかはこうやってわがままを言う事が多い。
「駄目です、行きますよ? 取り敢えず早くシャワー浴びましょう」
「うー……。けどけど、このまま家でゆっくりしてずーっと抱きしめあってたら幸せだって思わない? 私は最高だと思うな―」
確かにそれは幸せだろう、だろうけど……。
「朝比奈さん、僕と同学年になりたいんですが?」
「うっ……! 私に先輩というアイデンティティが無くなっちゃう……それは駄目、奏さんに負けちゃう!」
そう言うと、朝比奈さんがようやく布団から這い出る。
俺も後に続くように布団から出ると洗面所へと向かう。
「最近悠斗君が私のわがままを聞いてくれない……」
わざとらしく肩を落とす朝比奈さん。
かわいい……。
「いや、それは……」
俺が困ったように返事をするとすぐに顔を上げて笑顔を向けてくれる。
「けどそう言う所、私すごく好きだよ。なまけちゃう私を引っ張ってくれる悠斗君だから私はあなたを好きになったの」
その声音は真剣そのもので、だからこそ無性に照れ臭くなる。
「だから、これからも私のわがままを許さないでいてね?」
「というか、あんまり言わないでください」
「き、気を付けるよ……!」
朝比奈さんが下着を脱いで逃げるように風呂場へと入っていく。
きっとこれからもたくさんわがままを聞いて、たくさん注意する事になるんだろう。
そんなやり取りが、たまらなく幸せだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます