第2話

少年が青年に近づく頃、環境が大きく変わった。


まず、少年は都会の優秀な学校へ通うために村を出た。

次に、少年に友人ができた。それも心からと言えるほどの。


少年は村を出ても人目を引く容姿と学問や武術の才能で賞賛される日々であった。

一見すると、才能に恵まれ良いことのようだが、周囲の人々に賞賛されるたびに少年のため息は増えていった。


少年は、みんなが自分自身ではなく、自分のステータスにしか目を向けていないと思っていた。そして、実際のところそうであった。


少年は寂しかった。孤独を感じていた。


勉強や武術は楽しいし、やればやるほど成長できることが嬉しかった。

時には、苦しいこともあったけど、みんなが期待してくれていると思うと頑張れた。


だから、いつも自分のことをすごいねと褒めてくれる人たちにはとても感謝していた。でも、自分の努力を才能と言われ、無かったことにされるのが悲しかったし、モヤモヤした。



このやるせない気持ちを誰かに言うことができたなら、どんなに救われただろうと考えることもあった。

しかし、みんなが期待する自分、きれいな自分でいようと決めたのは少年自身であった。だから、少年はそんな孤独感を感じる日々を自分の使命だと思い込むように生きていくことにした。


そんな少年にも転機があった。

「お前、贅沢だよな」

突然そんなことをいう少女に学校で出会った。

少年にそんなことを言う人間は今までいなかった。


だからこそ、彼女の言葉の意味を知りたかった。

それから、少年は彼女に積極的に話しかけるようになった。




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少年の壁 ゆず。 @tansansui-ramen

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