…
またカモにされなきゃいいけど、と心配になった。
が、もう僕は彼のアドバイザーとして機能していないから、失敗したらしたで彼の学びになると割り切って様子見することにする。
これまでもそうだったけど、だいたい、痛い目に遭ったことのない人間は守護霊に聞く耳が持てないようだ。
ということで、どちらに転んでも彼にとってはトータルでプラスになる。
当日は某ターミナル駅の改札で、二人は約束通りきっかりの時間に顔を合わせた。
マッチングアプリは、顔写真を別人級に加工する人がそれ相応にいるのだが、紗和はその点アプリの画像のままの人だった。
ある意味、彼女は誠実かもしれない。
「はじめまして、紗和さんですね」
「そうです」
「僕、ハジメです。ヨロシクね」
「ハジメさん、はじめまして」
いい歳した二人ではあるが、実に初々しい。
二人は、事前に多良さんがチェックしていた駅前のカフェレストランに入った。
料理の注文をしたあと、彼女は金を入れた封筒をよこした。
「あのう、これ、ありがとうございました」
きっちり二万円が返ってきたのである。
それで、多良さんは彼女は信用に足る女性だと、ますます気持ちが前のめりになっていた。
少し前までは痩せている人がいいなんて言っていたけど、彼にはストライクゾーンなんてあってないようなものかもしれない。
結局俗にいう、好きになった人がタイプなんだろうね。
多良さんも、それは自覚しているのだろう。
少しタイプと違うくらいの人が緊張しなくて良い、世の中でもニ番目に好きな人との方がうまくいくというし、と自分に言い聞かせている。
まあ、それも背後霊、もとい守護霊の僕には丸聞こえなんだけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます