またカモにされなきゃいいけど、と心配になった。

が、もう僕は彼のアドバイザーとして機能していないから、失敗したらしたで彼の学びになると割り切って様子見することにする。

これまでもそうだったけど、だいたい、痛い目に遭ったことのない人間は守護霊に聞く耳が持てないようだ。

ということで、どちらに転んでも彼にとってはトータルでプラスになる。


当日は某ターミナル駅の改札で、二人は約束通りきっかりの時間に顔を合わせた。

マッチングアプリは、顔写真を別人級に加工する人がそれ相応にいるのだが、紗和はその点アプリの画像のままの人だった。

ある意味、彼女は誠実かもしれない。


「はじめまして、紗和さんですね」

「そうです」

「僕、ハジメです。ヨロシクね」

「ハジメさん、はじめまして」

いい歳した二人ではあるが、実に初々しい。


二人は、事前に多良さんがチェックしていた駅前のカフェレストランに入った。

料理の注文をしたあと、彼女は金を入れた封筒をよこした。

「あのう、これ、ありがとうございました」

きっちり二万円が返ってきたのである。


それで、多良さんは彼女は信用に足る女性だと、ますます気持ちが前のめりになっていた。

少し前までは痩せている人がいいなんて言っていたけど、彼にはストライクゾーンなんてあってないようなものかもしれない。

結局俗にいう、好きになった人がタイプなんだろうね。


多良さんも、それは自覚しているのだろう。

少しタイプと違うくらいの人が緊張しなくて良い、世の中でもニ番目に好きな人との方がうまくいくというし、と自分に言い聞かせている。

まあ、それも背後霊、もとい守護霊の僕には丸聞こえなんだけどね。



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