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親と上司が選べないのと同じで、自分の立ち位置は自分では決められないから、金も器量も運もないまま歳だけ重ねたことで女性に相手にされないのは、仕方のないことには違いない。
それでまだ世間慣れしていないずっと歳下のグラビア女性を、画面越しに眺めて恋に似た気持ちを持ったりしている。
アニメとか漫画の二次元女子にしか萌えないヲタク男子よりは、よほど健全だと自認しているようだが、そういうのを五十歩百歩という。
が、インターネット社会は実に素晴らしい。
同性だらけであとは紅一点のお局様だけの職場にいても、出会いの場を与えてくれる。
当然多良さんも、マッチングアプリや婚活サイトに関心があるようだ。
突然彼は、ガッツポーズをした。
「俺にも春が来たかもしれない」
人生でかれこれ、もう四十数回も春を迎えている人間が何を言い出すのか。
が、当の彼に言わせると、これまではずっと”冬”だったらしい。
学校や会社ではクズと呼ばれイジメの標的になり、好きになった女性には誰からも相手にされず、たいした金も稼げず、それでも思い切って行ってみたキャバクラでは所詮疑似恋愛、カモにされておしまいだったという。
彼の肩越しにスマホの画面をのぞくと、マッチングアプリだか婚活サイトだか分からないが、少し愛嬌のあるタヌキ顔の女性が映っている。
彼女の方からイイネが来たらしい。
全身画像は、ぷっくりしていて、彼はそれがまた優しげで人が好さそうで良いのだという。
お、おう。
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