第2話

てくてくてく

 みたことのない場所を僕は家族と共に歩く。昨日の夜,日本の飛行機に乗ったらここにきた。

 周りを見るかぎり,ここが日本ではない場所ということがわかる。

「剣,星川ほしか真希まき。お父さんな,転勤になったんだ」

 お父さんはしっかりと僕らの目を見て話してくる。

 転勤……転勤……お父さんから言われた言葉がぐるぐる頭の中を回っている。

「転勤って……どこに……」

 星川姉さんがお父さんに真剣な顔で聞いた。

「タイという国だよ」

「タイ……?」

 引っ越し……らしい。

 今年から……別の学校に通うらしい……

 僕たちはお父さんのドライバーが待っているらしい場所へ歩く。時刻は朝の八時。

「真希兄さん……」

 僕は隣を歩く真希兄さんに声をかけた。

「剣……どうした?」

「もう……日本の友達とは……遊べないの……?」

 僕がいうと,真希兄さんは困ったように眉をひそめた。

 それで僕は察してしまう。

 もう……遊べないんだ……ってことを。

 そう思うと悲しくなって,僕は星川姉さんの隣に行った。


 車で一時間。ついた場所は大きなマンションだった。

 今日から僕の家。ここの17階。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る