第3話

次の日,僕は兄さんに起こされた。5時25分に。

 今日は学校。着替えて朝食を取る。朝の6時25分にランドセル……じゃないやリュックを背負って家を出る。

「行ってきます」

 お母さんに声をかけて部屋を出た。

 ロビーに着くと,バス代表さんが待っていた。そう!なんとこの学校,登校はバス登校なんだ。

「おはよう剣君。こっちにきて。君の待つ席はこっちだよ」

 そう言われて案内された場所に腰を下ろす。

 おばさんはいろんな人を案内している。僕はもらったバスの席順を見た。

 僕の席は一番後ろ。前の座席に星川姉さんと真希兄さんが座っている。

 僕の隣は……女の子だ。


 順番にバスに乗って行く。一バス。二バス。三バス。僕はにバスだから,真ん中。

 このアパートには僕と同じ学年は一人だけ。女の子だ。その子が僕の隣らしい。同じ時期にこのアパートに引っ越してきたそうだ。

 ついに僕の順番になった。ソファーを立ち上がる。

 大きなバスに乗り込んで,一番後ろの席に座った。

 その後に女の子も乗ってくる。

 黒くて澄んだ瞳の女の子。こちらを向いてニコッと笑った。

「よろしくね。剣君」

「えっ。なんで僕の名前……」

 そういうと女の子は吹き出した。

「紙に書いてあったもの。クラスも同じ。」

 あっ。確かに書いてあったような……

「よろしく……えっと」

「ボクの名前?ボクは黄花。黄花って呼んでね」

「じゃぁ……黄花……」

「これからよろしくね!剣!」


 黄花とは話がはずみ,バスを降りる頃にはすっごく仲良くなっていた。

 黄花は話すのが上手だし。僕との話題も合う。いい友達になれそうと心が弾んだ

 僕たちはバスを降りて学校の入り口に立つ。その隣に黄花も並んだ。

「えっと……バスを降りたら近くの先生に声をかける……だって!」

 僕たちは少し歩いて『六年転校生』と書かれた看板を持つ先生の前に行った。

「すみません!六年五組転校生のヴェロキ黄花と,野々村剣です」

「黄花さんに剣さんね。ついてきて」

 僕たちは先生に続いた。

 大きな校舎はいくつかの棟に分かれていて,前の学校とは比べ物にならないくらい広かった。

「すみませぇん!転校生ですぅっ!」

 先生が大きな声で呼びかけて,みんなが一斉にこちらを向く。

 全員の眼差しはすぐに離れた。

 そして僕たちは自分の席についた。黄花とは隣の席で,一番後ろ。

 席に着くと,本当に始めるんだって気がして……ワクワクしてきた。

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