アンダーファクトリー

宿は、思ったより広かった。

カラスマとマリアはあっとゆう間に眠りに落ちてしまっていた。

カラスマはゆっくりと目を開ける。そこは、知らない天井であった。

「ああ、僕は、宿に泊まっていたんだった」

ゆっくりと体を起こし、時計を見る。時刻は朝の八時、少しだけ寝すぎていた。

マリアを起こそうとするが、「今日はまだやること何も無いわ」と言って再び布団を被ってしまった。

カラスマは仕方なく、ひとりで宿の外へと出ることにした。

そこは工場街であった。

どれもトタンの背の高い建物で、もくもくと煙を上げていた。こんな街並みは、おそらく地球では、二度目の大戦が終わった頃にしか無かっただろう。

「君は、この星の人ではないね?」

訊かれ、振り返る。

「君は?」

ピンク色の肌、若い男の子だ。

「僕はこの街に住んでいるんだ。あそこの、いちばん背の高い煙突の工場の手伝いをしているんだ」

指さした先は、確かにこの街でいちばん高い煙突だった。

「あそこでは何を作っているんだい?」

男の子にううんと唸り、首を傾げる。

「それは僕も知らないよ。だけど、とても大切なものなんだって」

「へえ」

それじゃあね。男の子はパタパタと走って行ってしまった。

カラスマはまた、ひとり、道に取り残された。

街の子も知らない、工場の中に、少しだけ興味が湧きつつ。

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月の都 兎莵兔菟 @usagi-rabbit

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