第14話 証言者Ⅱ
証言2 同僚
確かに激しいパワハラでした。間島君は追い詰められていたと思います。
でも間島君は子供たちが大好きで、一時期特にある一人の子と仲良くしていました。その子は家庭の事情で一時的に施設に来ていて、よく二人がグラウンドでサッカーをしているのを見ました。間島君がよく言っていました。子供達のおかげで僕は僕のままでいられるんだと。そんな彼を周囲のスタッフもできるだけサポートしました。その子は施設にいた期間が短すぎたので、正直なところあまりどんな子だったかは覚えていません。もともと何か問題があってきた子じゃなかったので。
うちの施設では新しい子の入所がある場合、入所の理由によって特別観察員を付けるようにしていました。例えば、亡くなった子たちのように家庭環境が劣悪な子の場合、施設の集団行動に馴染めず、非行に走ることはよくあることです。そうならないようにスタッフが一人つきっきりで一か月施設の生活の仕方や勉強などのサポートをします。どの子にも一応観察員はつけることになっていましたが、その子はすぐに退所する予定だったのと、特に問題ないだろうという判断で、アルバイトの間島君が観察員になりました。普通なら正社員のスタッフが付くところを研修という形で特別に付きました。間島君はそれが嬉しかったのでしょうね。とても張り切っていました。
その頑張りのおかげかその子も早くに施設に馴染むことができ、施設長も高く評価していました。しかしその反面、観察員の仕事も課された間島君は大量の仕事量を一気に受けることになりそれも彼を苦しめていたと思います。
かわいそうに…あんなに頑張っていたのに。確かに施設長から彼を助けることはできませんでした。施設長に逆らうことはできませんでした。今でも間島君にもっとしてあげられることがあったんじゃないかと思います。正直あの事件は施設長のせいで起きたことだと思います。あの二人が間島君に懐いているのを知って、自分が二人を指導すれば二人のイラつきは弱くて優しい間島君に向かう。でも間島君が施設長に何かできるわけがない。だから自分に向ってきた自分よりも小さくて弱い相手に手を出した。助けられなかったことを後悔しています。
その仲良くしていた子は本当に数か月しかいなかった子で、事件が起きた後一か月で家へ戻りました。事件のことも会ったのだと思いますが、今思うとその子がいなくなってから間島君はすべてに疲れていったのかもしれません。間島君もその子を追うようにして施設を辞めました。
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