第13話 証言者Ⅰ

証言Ⅰ 施設長


 間島くんはもともとアルバイトを転々としていました。施設近所の本屋でバイトしていた彼は施設の子供たちが万引きしたと施設に連絡してきてくれたんです。警察には結局通報せず子供たちが本気で反省できるように諭してくれた彼に私から施設に来ないかと誘いました。施設での彼は本当によく働いてくれて、子供達からの人気もありましたしどんな仕事も張り切ってやってくれました。気が付くと間島君は施設の中でも頼りがいのあるスタッフの一人になっていました。

 特に子供たちと遊んだり、その日のレクリエーションを考えるのが上手でしたね。亡くなった子は二人でよく遊んでいる仲のいい子たちでした。少しやんちゃではありましたが親の迎えを楽しみに待つ純粋な子でしたよ。親御さんはなかなか施設へは顔を出せない忙しい家庭のようでしたから、多少の悪さは子供らしい寂しさの代償と捉えるようにしていました。数人のスタッフは彼らに手を焼いていた様子ですが、彼らは私の言うことには耳を貸しましたし、誰の言うことも利かないような子供ではありませんでした。私が間島君にパワハラですか?あるわけないでしょう。最近流行っていますよね。何とかハラって。

  私は間島くんを施設の正社員として受け入れるつもりでした。そのために施設での仕事や子供と関わるときのポイントなどを直接指導していたまでです。それに僕はよく仕事終わりに彼を食事に誘い、いろんな話を聞いてあげていました。私が責任を取るしかないと思い、施設長の座を降りました。今は家庭で居場所がない子供たちが少しでも安心して食事を食べ、宿題ができる環境を作りたいと思い、子供食堂を経営しています。


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