第6話 新たな殺人
気が付くと二人ともそのまま眠ってしまっていた。望が目を覚ましたのは午前四時。家を出るには六時までに支度が終わればいい。顔を洗った望はぼうっと髪をかき上げた。理子は、誰にあんな風にして殺されたのか。人骨などそう滅多に手に入らない。もし望や黒澤の推測が正しければ誰が遺体の一部を持っていたのか、間島には協力者がいたということなのだろうか。
望は寝起きの割にはよく働く記者頭だな、と人ごとに考えていた。黒澤は一度自宅に帰ってから出社するといい、慌てて出ていった。
出社すると、まず望は西田医師にアポイントメントを取った。しかし西田医師は理子の一件が絡んでいるのか、疲れた様子で、しばらくは時間が取れないと断られてしまった。
間島に、理子が亡くなったことを伝えたのかが気になった望は、また時間ができたら教えてほしいとだけ伝え西田医師との通話を切った。望が最後に西田医師と会ったのは、もう随分前のことだ。
西田医師は眼鏡をかけた中年の医師で、常に穏やかな表情の男性だった。初めて会った時も望のことをマスコミ関係者だと聞いても嫌悪を表情には出さなかった。それまで望が関わった人々は望の職業を知ると、あからさまに顔を曇らせるか、野次馬的に目を光らせるかの二択だった。どちらも人の反応としてはひどく素直だ。西田医師はその立場や経験からか、自然と他人を色眼鏡なしで見てくれる珍しい人物だった。 しかしここ最近は連絡しても断られることが多く、声にも張りがなくなっていた。 そんな西田医師が、望は心配だった。望はもう一つ取材したいところがあった。理子の両親だ。望は黒澤を連れて理子の両親に会いに行くことにした。
電話で話を聞きたいと伝えたところ、対応してくれた父親は電話口でもわかるほど、涙を流していた。望もその様子を感じ、胸が痛んだが父親は応じると返事をくれた。縁を切ったとは言え、やはり娘が大切だったのだろう。泣きながら娘を見つけてくれてありがとう話していた。間島と関わったことで理子が事件に巻き込まれた、と両親が思わないような説明に苦労した。両親にとって受け入れがたかった間島との結婚については話題に出すのを控えたが、理子の最近の様子を聞いた両親の目には大量の涙が浮かんでいた。両親が理子と離れていたこの数か月が二人にとってはひどく長かったようだった。肩を震わせる二人をみて、望の中に沸々と正義感が湧いていた。たった一人の大事な娘が亡くなったのだ。
望の話を聞いた理子の両親は苦しそうに口を開いた。
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