第21話
ホムラは味方に構わず、火球を青年に向かって放った。
その火球はまっすぐ青年に向かい、それに気づいた青年は青色の盾を構え迎え打つ。
「これが魔法ですか、初めて受けましたけど、なかなか派手ですね。」
青年は青色の盾を構えながら呟く。
火球は、盾にぶつかった瞬間、文字通り消失したのだ。
「どういう事だ?」
ホムラは、少し警戒しながら呟く。
「簡単な事です。あなたの炎よりも私の盾の方が強かった。ただそれだけの事です。」
それを聞き、ホムラは叫んだ。
「盾だと…まさか!貴様タテ家の生き残りか!!」
「盾家?なんの事か分かりませんね。」
黒髪の青年は答える。
「処刑されて失伝したか、王家が取り込んだかと思ったが、なんとも興味深い事が起きたようだな。まぁ、そんな事は関係無い。結局お前はここで死ぬのだから。」
ホムラの頭上には、数百もの火球が浮かんでいた。それはまるで、小さな太陽がいくつも浮かんでいるようだ。
「死ね。」
ホムラは火球を放つ。それは、1発ずつではなく、マシンガンのように次々放たれた。
しかし、空の火球は減るどころか次々に増えていく。
ホムラは淡々と火球を造り、マシンガンのように放っていく。味方を巻き込んでいるが気にも止めずに。
"熱い助けて"
"ホムラ様なぜ"
大地は溶け、草木は灰となり、逃げ遅れた兵士達が燃えて泣き叫ぶ。まさしく、そこには、地獄が広がっていた。
「呆気ないものだな。」
1000を超える火球を放ち終え、ホムラは呟いた。
彼の名は、エンジョウ・ホムラ。王国でも有数の殲滅力を誇る魔法使いの1人。人々からは、その容赦の無さと炎を扱う姿から"悪魔"と呼ばれている。
ホムラが戦った後には、戦地は地獄になる。彼を知る者達は知っていた。
全てを焼き尽くしてしまうからだ。敵味方関係なく、遺体すらも残らないほどに。
ホムラに従う者たち、兵士達は思っていた。今回も、これで終わりだなと。しかし、今回は違った。
"あれは何だ?"
自分の後ろにいる兵士達の呟きを聞きホムラは目線を向けた。
そこには、無傷の青年が居た。まるで、何も無かったかのように。
ホムラは自分の目を疑った。こんな事は、魔法を授かってから、一度も無かったからだ。
「いやぁ、派手ですね。まるで物語の主人公だ。もしくは、強キャラの1人ですね。ただ、味方を気にしないのは、流行りませんよ。」
そして、いつの間にか、緑と白色の小さな盾に持ち替えた青年の周りを緑色の光が包む。
その直後、燃えたはずの兵士達が、草木が、大地が、元の状態に戻った。文字通り、何も無かったかのように。
「皆さん、お逃げなさい。また燃やされてしまいますよ。あの悪魔に。」
その盾の効果は、再びよみがえらせること。名を、"起死回生の盾"という。
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