森の中の都市編
第16話
ここはエンジョウ家の本拠地、人口10万人を超える都市ファイア。そこには、贅が尽くされた屋敷があった。そう、エンジョウ家の拠点である。そこでは、臣下により当主に報告が行われていた。
「報告します!近年、謎の失踪が相次いで居ましたが、原因が判明しました!辺境の森にて大規模な街を発見し、そこに皆向かっていました!私が直接確認した為、間違いありません!」
最初は、税の取り立てに行った際に気づいた。小さな村がもぬけの殻になっていた事に。それからも、村がもぬけの殻になることは相次いだ。
さらに、街からも突如一族丸ごと失踪する事も多発した。共通していたのは、裕福でないものという事だった。
それにより、税収が減ったのだ。人口が減ることで生産量と消費が落ち込み、財を成していた商人達も貧しくなるか、拠点を変えてしまった。つまり、エンジョウ家の収入は右肩下がりとなっていた。
「農村の奴らが消えるのは、まぁ分かる。街の奴らが消えてくのは何故だ?生活出来る程度には税を抑えていたはずだが?」
当主、エンジョウ・ホムラは臣下に問う。
「それが…どうやら変な宗教が庶民の中で流行っているそうです。最初の報告に繋がりますが、その大規模な街が宗教の本部らしく、皆そこに向かっています。」
臣下は報告を続ける。
「その街は、かなり発展していて、様々な産業があり、豊富な資源もあります。」
「なるほど…欲しいな。」
ホムラは呟いた。
「目の前に極上の餌が置かれて、食わねえやつはいねえよな。」
獰猛な笑みを浮かべ、ホムラは続ける。
「それに、このまま待つのは破滅だ。人が吸われていくだけだ。俺たちは追い詰められている。先に手を出したのは奴らだ。」
ホムラは臣下を見渡し続ける。
「傘下になるか潰されるか、選ばせよう。領内から兵と武器と食料を集めよ。」
「はっ!」
「父上!」
そこで発言する者が居た。ホムラの娘のメラである。
「私は反対します!手を取り合う事は出来ないのでしょうか?その方が領民は幸せになれると思います!ご検討ください!」
メラは昔からよく領内を歩き回っていた。そこで領民の話を聞き、どんな生活をして、何に困っているのかを知った。領民の生活をなんとかしたいと思っていた。
「ならん!領民が幸せになってどうなる!エンジョウ家が幸せにならなければ何の意味もないではないか!」
「エンジョウ家が幸せになるには、領民が幸せでないといけません!領民が豊かになるほど税も増え、我々も豊かになるはずです!どうか!シールド教団と手を取り合って下さい!」
「兵よ!その愚か者を牢屋にぶちこんでおけ!」
「父上!お考え直しを!」
メラは会議室から連れ出された。
「娘が失礼した。兵と武器と食料を集めよ。戦の支度だ。」
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