第15話
それから、時は流れ、シールド教団の拠点が完成した。
当初は、辺境の森の中に、ひっそりと作る予定だった。しかし、アレも欲しいこれも必要と少しずつ広がり、日に日に人が増え、さらにアレもこれも…としているウチに…かなり大規模な拠点になってしまった。
人口は10000人を超え、毎日のように移民がやってくる。小さなトラブルはあったが、大きなトラブルは無かった。何故なら、来る者は皆、盾の教団の信者なのだから。
中央には、教会が建築されていた。特徴的なのはステンドグラスだろう。黒髪の青年が神に盾を授けられる様子が描かれている。そこでは、毎日、エンドによる演説が行われている。
「皆の頑張りにより、このような立派な都市を作ることが出来ました。私は皆を誇りに思います。」
満員の礼拝堂では、聴衆に向かってエンドは話しかけていた。最前列には幹部が座っている。
「我らが主のお力です。」
リラは立ち上がって答えた。リラはその熱心な働きにより幹部に名を連ねることになっていた。現在、布教局長を担っている。
「ああ、我らが主のなんと偉大な事か。自らの贅沢ではなく、全て皆の住処に使ってしまうとは。」
リラは皆の気持ちを代弁する。エンドの着ているものは皆と同じだった。食事も何もかも。
「私の故郷にこんな言葉があります。"情けは人の為ならず"です。これは他人に対する親切が巡り巡って自分に良い結果をもたらすという意味です。つまり、全て私のためにやっているのですよ。」
「ああ、なんと素晴らしい言葉。経典に加えなければ…」
この拠点では、様々な産業が生まれていた。エンドの一言がきっかけで、白い紙の作成にも成功し、それを使って経典が作られようとしていた。
拠点では他にも、広大な農地、畜産、衣類、家具、各種鉱石の採掘と加工場など様々な産業が誕生していた。元々携わって居た者達の知識に、エンドの一言が合わさった結果だ。
貨幣の作成にも取り掛かっていたが、都市の中で使う者は居なかった。そう、全て配給制だからだ。
しかし、誰も不満はなく、生産能力が下がる事も無かった。何故なら、組織のリーダーが率先して皆の為に働いていたからだ。
貧富の差は無く、誰もが皆の為、主の為に働き、皆で豊かになっていく。金の為ではない。皆が理想郷を作るという一つの目的に向かって働いていた。
誰もが飢えず、寒さに震えず、安心して暮らすことのできる場所。皆が求めた光景がそこには広がっていた。
「シールド教団に栄光あれ」
リラは代表して唱える。それに続き、皆も唱える。
"シールド教団に栄光あれ"
"シールド教団に栄光あれ"
"シールド教団に栄光あれ"
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