第14話
「皆さん良いですか?こんな言葉があります。我が主は言いました。"神は人の上に人を造らず"と。」
ここは辺境の街ルクスから、少し離れた場所にある、名も無き小さな村。そこで、村人に向かって話しかける者が居た。
彼女の名前はリラ。シールド教団の伝道師の1人だ。
彼女は、アイシャに石を投げた者の1人だ。その時のエンドの言葉、そしてその行動が彼女を変えた。
彼女は思い知った。自らの愚かさを。同時に感じた。エンドの偉大さを。そして悟ったのだ。この方をもっと広めなければいけないと。そうすれば世界は、救われると。これが自分の使命だと。
「この言葉の意味は、人は皆、平等という事です。神は、人に格差なんて望んでいないのです。皆さんは、格差を感じた事はありませんか?」
村人は真剣に聞いている。
「おかしいとは思いませんか?神は望んでいないのに、人は格差がある。生まれた瞬間に、格差がある。神は平等を望んでいるのに、人は平等でない。」
落ち着いた声でリラは話し続ける。
「それは何故か、そう、格差は人が作り出しているのです。貴族、国王、金のある商人、権力を持つ者達が、我々を貧しくしている。我々から税を取り、人を攫い、金を物を奪っていく。」
「それを糧に彼らは富む。綺麗な服を着て、豪華な部屋に煌びやかな家具を起き、好きなだけ好きな物を食べ、酒を飲む。そして、奴隷を買い、人の尊厳を踏み躙る。」
村人は悔しそうな顔をする。
「それに対して、我々はどうでしょう?服はボロボロ、家もボロボロ、家具なんて無い。日々の食事も満足な量も無く、酒なんてもってのほか。」
"そうだそうだ!おかしいだろ!"
"なんで私達だけこんな暮らしをしなきゃならないの!"
一部の村人は叫ぶ。
「こんな生活を続けたいですか?幸せですか?子供、孫に同じ思いをさせたいですか?」
"こんな生活はこりごりだ!"
"孫達にはこんな思いをさせたくない!"
皆、不満なのだ。今の生活に。
皆、不安なのだ。未来が。
「盾の教団の教祖様、我らが主様は神に力を、使命を与えられました。教祖様は格差に苦しむ人々を救おうとされている!毎日!身を粉にして働いてくださっている!」
村人は怒った。今の支配者達に。そして思った、潰してやりたいと。
「ただ、気をつけてください。復讐からは何も生まれません。彼らを襲っても、潰しても、我々は幸せにはなれません。何故だか分かりますか?」
村人はわからない様子だ。
「それは、奪える量が決まっているからです。それをみんなで分けて、満たされますか?私は全然足りません!」
村人ははっとした。
「我々が満足するまで生み出さなければいけない!子供が!孫が!ひ孫が!未来永劫満たされなければ私は満足できません!だから、1番の復讐は我々が未来永劫幸せになる事なんです!」
村人は叫んだ。そして気づいた。今のままではいけないと。自らも変わらなければならないと。
「理想郷を作りましょう。未来永劫、誰もが飢えず、寒さに震えず、安心して暮らすことのできる。そんな理想郷を共に作りましょう。」
「我らが主は言いました。"ワンフォーオールオールフォーワン"と。これは1人は皆の為に、皆は1人のために行動せよと。という意味です。」
リラは村人、1人1人の目を順番に見ながら語りかける。
「1人1人が"人民の守護者"として、役目を果たしましょう。隣人のために生きましょう。時が来たら迎えに来ます。毎日、我らが主に祈りを捧げましょう。」
リラは両手を広げて言った。村人もそれに続いた。
「シールド教団に栄光あれ。」
"シールド教団に栄光あれ"
"シールド教団に栄光あれ"
この光景は、最初は小さな村から始まった。そこから、街に広がり、他家の領地に広まるまでそう時間は掛からなかった。
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