第13話

 「ねえ、奥さん聞いて、最近新しい教団が話題らしいよ。なんでも、人民の守護者をうたってるとか。」


 「私も知ってる。シールド教団でしょう?なんか怪しいけど、良い事言ってるのよね。なんだっけ?神は人の上に人を造らずだっけ?」


 「そう、人類は皆平等って意味らしいよ。私たちはこんなボロボロの服を着てなんとか食い繋いでるのに、貴族様は何を考えてるのかね。」


 辺境の街ルクスでは、近頃奇妙な噂がある。シールド教団という団体が生まれたとか。


 末端の市民の間でポツポツと話題に上がっていた。


 そう、エンド様を讃える会は名を改め、シールド教団としてスタートした。


 盾は英語でshieldと訳される。shieldには匿う、保護するという意味もあるのだ。


 シールド教団という名前は、安直ではあるものの、そんな想いが込められている。


 「進捗状況はどうですか?」


 エンドは幹部に問いかける。


 「アタシからは、財政について説明する。主な収入は前のファミリーの時にやっていた事業だ。人数が増えたが慣れてないやつが多いから、徐々に拡大していければなと言うところだ。」


 エンドは思った、何をしているんだろうと。


 「事業内容は何でも屋だ、例えば、森に言って狩猟をしたり、それを肉屋や服屋に卸したりだな。現物支給の日もあれば、硬貨をもらう日もある。後は、悩み相談もしたりしてるな。」


 エンドは安心した。なんか真っ当な商売ぽいと。


 「支出は、主に食費だな。130人が食べるものに加えて、新たにスラムに来たもの達への炊き出し。衣類とか他にも色々掛けたいところだが、現状無理だ。エンドが言って居た新しい拠点の作成はまだ厳しいと思う。」


 エンドは思った。確かになと。


 「労働の対価だが、アタシ、ほんとは配給制より、一人一人給料制の方が良いと思ったんだ。でも、今のままで大丈夫かもしれない。エンドのおかげだな。」


 エンドは思った。残業代出ないのに、みんな残業しているのは不思議だなと。しかし、エンドは勘違いしていたのだ。自らが起こす魔法という奇跡の影響力を。自らの言葉の重みを。


 「今は、そんなところだ。人が育ったら衣類も充実すると思う。アタシからの報告は以上だが、何かあるか?」


 「特に大丈夫です。次は、開拓班お願いします。」


 クダルが立ち上がって話し始めた。


 「オレは、数人連れて新しい土地を探してきた。しかし、魔法の盾は凄いな!なんだ?金剛不壊の盾は、ビックボアの突進を1人で止められるとか、どうかしてるぜ!」


 ビックボアとは、体長5m程のイノシシのような生物だ。


 「まあ、そんなわけで、他の盾もやばかったが、そのおかげで探索はスムーズに進んでる。誰も手が出してないフリーな土地は見つかったぞ!今は、周りの資源があるかを調べてるところだ。」


辺境の街ルクスの先には未開の地が広がっていた。正式な名前は無いが、皆は辺境の森と呼んでいる。


 誰も手をつけていない理由は簡単で、危険生物が多く、王国も他国も手が出せなかったのだ。


 浅層には5mを超えるビックボアをはじめ、ダイジャという10mのヘビ等が生息している。30m超えの飛龍も奥地では見つかっている。


 「良い感じですね。引き継ぎお願いします。自警班はどうですか?」


 小さい子供達も居る為、治安維持のために自警班を組織した。


 「…問題無い。」


 シンは静かに答えた。

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