第8話

 盾と剣がぶつかる音が響いている。周りのもの達は、ほとんど目で追う事が出来なかった。


 「兄貴…こんなに強かったんすね…ここまでとは思わなかったっす…てか、速すぎて全然みえないっす。むしろ、兄貴止まってるっす。」


 シンは無言でエンドに斬りかかり、エンドは冷静に受け止め続ける。


 「…お前、なかなかやる。」


 「それはありがとうございます。シンさんも速いですね。」


 エンドは赤色に金色の紋様が浮かぶ盾を構えている。その効果は実にシンプルで、非常に堅固で、決してこわれないこと。名を、"金剛不壊"の盾と言う。


 「…その盾どうなってる?剣が負けてる。」


 「この盾ですか、私の故郷に金剛不壊という言葉がありましてね。それをモチーフに開発しました。おそらく、シンさんじゃなかったら、もう剣が折れてますよ。」


 周りの者が目で追えない速度で戦いながらも、2人は会話を続ける。


 "エンド様がんばれー"

 "シンさん頑張って!"


 目の前のハイレベルな戦いを前に、観衆は興奮していた。娯楽の少ない者達にとって、かなりの衝撃だったのだ。簡単にいえば、エンド側、アイシャ側関係なく、皆楽しんでいた。


 中には、この戦いを冷静に見つめるものも居たが。


 「速えが、付いていけない速さじゃねえ。ただ、エンドはまだ本気出してねぇな。最初の位置から全く動いてねぇじゃねえか。」


 クダルは2人の戦いを冷静に見つめていた。そしてただ1人、違和感に気付いていた。

 

 「…はあ…はあ…はあ。」


 「シンさん息が上がってますが大丈夫ですか?」


 「…お前…強すぎ。」


 シンも斬り続けながら気づいてしまった。自分が手を抜かれている事に。決して勝てない事に。


 「さて、皆さんも十分楽しめたようし、第二ラウンドと行きましょうか。」


 そう言ってエンドは金剛不壊の盾を消した。そして、新たな盾を出した。


 その盾は、手盾と呼ばれる小さな盾であった。


 「…その真っ黒な盾は何だ?」


 「これはですね…"百戦錬磨の盾"という名前でしてね、効果は体験して貰えれば。」


 シンは切り掛かった。疲労により無駄な力が抜け、極限まで集中した一太刀。それは、シンの人生の中で最も鋭く、シンが理想とするような、一太刀であった。


 しかし、次の瞬間、シンは上向きに倒れていた。


 「…何が起きたんだ?」


 クダルにはかろうじで見えていた。エンドは、シンの刃を盾で受け流しつつ、シンの腕を掴んで背負い投げのように床に叩きつけていた事を。


 「これで、終わりですか?」


 「…参った。」


 シンの降参を聞き、クダルが前に出た。


 「勝者!エンド!」


 "兄貴〜流石っす!"

 "シンも良かったぞ!"


 両者の健闘を讃える空間が広がっていた。しかし、ただ1人、冷や汗をかき、顔色悪い者がいた。そう、アイシャである。


 

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