第4話

 「兄貴ー!兄貴ー!」


 ハンナは焦っていた。このまま目を覚さないんじゃないかと。そしてその焦りは冷静さを失わせていた。


 「兄貴ー!ダメっすね。こうなったらアレをやるっす!」


 ハンナはエンドの胸の上に両手を重ね、圧迫を開始した。そう、心臓マッサージである。しかしながら、エンドの心臓は動いており、呼吸もしていたが。


 (この時、エンドは夢の中で老人と話をしていた。)


 ハンナは頑張った。息も上がり、涙と鼻水でベトベトになりながらも心臓マッサージを続けた。その結果、ハンナは気づいた。心臓が動いている事に。


 「はあ…はあ…はあ…」


 息を整えながらハンナはようやく気づいた。息もしている事に。そして思った。あれ?生きてはいるぞ?と。ではなぜ目を覚さないのかと。


 「眠っているだけっすかね?でも心配っす…何か病気になってたらどうしようっす…」


 (この時、エンドは夢の中で魔法で遊んでいた。)


 そんな時に、"怪力"のクダル、またの名を筋肉達磨が現れた。


 「鍋返しに来たぜ!ごちそうさんってエンドの奴どうしたんだ?寝てるのか?」


 ハンナは思った。筋肉達磨やと。


 「そ、そうっすね!疲れてるみたいで寝てるっす!ただ、なかなか目を覚まさないっす…」


 「なるほどな、ちと見せてみな」


 そう言ってクダルは、エンドの様子を見始めた。手首で脈を取り、体温を確認し、眼球の反応を見た。


 その様子を見てハンナは思った。筋肉達磨はインテリ筋肉達磨だったのかと。


 「これは、寝てるだけだな。心配はいらねぇよ嬢ちゃん。ただちょっとここだと目立つから端に運んでやるよ。」


 ハンナは思った。めっちゃ紳士やんと。筋肉達磨は紳士なインテリ筋肉達磨だったのかと。


 「嬢ちゃん、もし起こすなら手伝うけどどうする?」


 「お願いするっす!」


 ハンナは反射的に答えてしまった。


 「嬢ちゃんいつも兄貴って呼んでたよな?じゃあやるぜ?」


 そう言ってクダルは上半身裸になった。


 ハンナは思った、なぜ脱いだのか?と。そして同時に思った。デカいよ!キレてるよ!と。


 その肉体は、まるで美術品のように美しかった。


 「いくぜぇ…すぅー…兄貴ー!!!!!」

 

 鍛え上げられた腹筋により底上げされた呼気の強さ。それは声の大きさに影響を与えた。つまり、その声は非常に大きく、辺り一面に響き渡ったのだ。周りに居た動物達は一目散に駆け出し、何事か?と1km以上離れたところにいる人も"アニキ?"と周りを見渡した。


 クダルは叫びながら、その強靭な肉体でエンドを揺った。そしてその効果は直ぐにでた。


 「ハンナ…すみません、眠ってしまっていました。」


 そして、エンドは目を開けた。目の前には…筋肉が広がっていた。


 

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