幕間


 夢を見た。あの、雨の日の夢。

 昔から雨が好きだった。雨は両親のいなかった自分を守ってくれた。悪口からも、嫌な物からも、嫌な音からも、何もかもを流し去って僕を守ってくれるからだ。

 傘を差す人々を見ると笑いが込み上げてきた。だって、あんなに群がって、強がっていた奴らも僕と同じでひとりぼっちになってたから。それがとても嬉しくて、とても悲しかった。

「君。ひとりなの?」

「…………」

 僕は、無言で、目を見ずに頷いた。

「……実は、私もなの………。よければ、なんだけど………その、私の友達になってくれないかな。」

 彼女は手を僕に向ける。僕は、その手をとった。必要とされたのが、嬉しかったから。

 そして、ひとりぼっちは寂しかったから。

 初めて握った他人の手は、自分の手より、何倍も温かかった。

 彼女の輝きばかりに目を向けていた。自身の醜さばかりに目が向いていた。

 そうか。どうしてこんな簡単なことを見落としてたんだろう。

 何がひとりになりたくないだ。結局、自分を一番に思ってただけなのに、それを侑への愛だと言い張って。

 自分で自分が許せなくなった。

 けど、まだ僕の手足は動く。償おう。僕の罪を。そのために、彼女に対して僕ができることに死力を尽くそう。そう思った。

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