第3話 事件

「ここだ」そう言われて連れて行かれたのは、会社の面接場のようなところだった。

というか、面接場だった。


なんか、組のトップみたいな人が沢山いて、なんとも威圧感がすごい。

「なぁ。撃抜、今回もあの選抜方法をやんのか?優秀な人材が居なくなるぞ?」

一人が不安そうに女性に話しかける。

その問いかけに対して、その人は小さく頷き、僕の方に銃口を向けてくる。


「私は絶対に外さない。避けてみろ。避けなきゃ死ぬぞ。」

銃を持っていない手の折られてない指が一つずつ減っていく。

え?選抜方法ってそういうこと?!これじゃあ避けれない人は死ぬじゃん。しかもあの人の名字、撃抜だから必ず当たるじゃん。


まぁ。一つの望みに賭けるしか無いか。自分の能力の可能性を信じて。

というか、色々考えてそれくらいしか無かった。

カウントが0になった時、僕は銃の位置を確認し、目を瞑る。

銃声が聞こえたが、痛みなど一切感じなかった。


大体これくらいかな。

見当をつけたところで手を伸ばして、目を開ける。


「ぐっ…」自分の腕を生温い感覚が包む。

僕が腕を伸ばした場所が、撃抜さんの右胸を貫通する。

あ!そういう感じ!?目を瞑っている間は、僕の体はその場にある物質と置き換えられて、目を開けると、その逆のことが起こるってこと?


焦って腕を引き抜くと、傷口からどくどくと血が流れている撃抜さんが椅子ごと後ろに倒れる。

ちょっと…取り返しのつかないことをしたような気がするなぁ…


その後、僕はしっかりと捕らえられ、別の会議室に運ばれた。


「はぁ…なんでこうなっちゃったの…?こっちにも非があるけどさぁ…とりあえず、名前を聞いていいかな?どんな能力を使ったのかを知りたいし。」


黒服に囲まれながら、撃抜さんの隣に居た人が気だるそうに聞いてくる。こんなに厳重な警備でも、僕の能力では無意味なんだけどなぁ…でも、抵抗しないでおくか。目を開けた隙を狙われたら終わりだし。


「僕の名前は、幻 優然。能力の概要がよくわかってないんですけど、目を瞑っている間は物理攻撃は完全に無効。かつ、目を開けた場合、僕の体とその空間が置き換えられます。だから、さっきみたいな事故が起こったんです。あれは本当にすいませんでした。前が見えなかったんです。」


言い訳まがいに言葉を並べる。

彼はまたため息を吐き、ゆっくりと喋り始める。


「はぁ…とりあえず自己紹介しとくか…ランキング三位、氷山 大葉だ。あ、ランキングの説明をしてなかったな。ランキングってのはな、最初は一番下から始まっていくんだが、上位の人に挑んで勝ったら、その人のランクを奪えるってやつだ。撃抜には敵わないけどな…」


でもな。と言葉をつなげる。


「今からお前にはランキング十位の奴と戦ってもらう。そいつに勝ったら、幹部の会議ミーティングに参加させてやる。」


絶対に勝てよ。と耳打ちをされた後、氷山さんが十位の人を呼ぶ。


「はっ!こんなもやし野郎が俺に挑もうってか?百年、いや、千年早えよ!泣いても知らねぇからな!はははっ!」

二十代後半辺りのぽっちゃり体型の人が騒ぎながらこっちに寄ってくる。何こいつ。

臭い体を押し付けながら、飛沫しか出てこない口で話される。


「撃抜を怪我させたとかなんとか言ってたけどなぁ、どうせお前は勝てないんだよ!大人しく降参して一番下から始めとけ!いいか!脳内にしっかりと俺の名前を焼き付けておけ!俺の名前はなぁ、武闘 勇気だよ!」


顔に向けて力任せのパンチがこっちに飛んでくる。ダルっ…

目を瞑り、瞬きに近い時間して、目を開ける。

たまたま関節の場所で目を開くことができ、肘から上を切り落とすことができた。


ぐおお!と悶えていたが、容赦無く頭を踏みつける。


「ねぇ。氷山さん。ここに蘇生持ちっている?」

親の死によって、僕の中で何かが吹っ切れたのだろう。人を殺そうとすることに抵抗を感じなくなった。


それを聞いた氷山さんはニヤッと笑い、

「いい質問だ。傷口を治すやつはいないが、蘇生させることはできる。」

と有益な情報を教えてくれた。


「じゃあ、お前は用済みだ。僕の足蹴になってくれ。」

笑顔で話しかけると、今にも血管が切れそうなぐらい真っ赤な顔にして、

「ふざけんな!このままじゃ、このままじゃ俺が幹部じゃなくなるだろ!おい!」

「あーうるさいうるさい。そんなんだったらいらないだろ。幹部なんかに。多分、ろくな意見も出してないんだろ。」


違うよな?といった目で氷山さんを見るが、ニコニコ笑顔で中指を立てていた。

「じゃ、お前いらないから死ね。」

瞬きをして、顔半分を無くす。うわ、グロ…


「うい。おつかれ。こいつ会議のときでも自己中な意見しか出さないから困ってたんだよね。じゃあ急で悪いけど、後一時間後に会議だから、急いで着替えたりして支度しといて。」

「え?着替え持ってないんですけど。」

「は?」


この後、めちゃくちゃ怒られた。

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