第12話茶園先生の憂鬱

病院へ運ばれた茶園先生は、狭心症の発作が出たらしい。

大事には至らなかったが、しばらく入院らしいことを医師が言った。

3日ほど経ってから、水沢と三嶋はお見舞いに行った。

病室に入ると、茶園先生の奥さんだと言う人がいた。

「すいませんねぇ。うちの旦那がご迷惑をおかけして」

と、2人に頭を下げた。

水沢と三嶋は、茶園先生が点滴をしていたが、茶園は、

「この点滴に日本酒入れてくれよ!目盛りよりたくさん」

「あなたっ!」

「すまん、すまん。迷惑掛けたね」

「先生ももう、若くは無いのですからお酒は控え目にお願いします」

と、三嶋が言った。

茶園はうんうんと頷いて、新しいお見舞い客が現れたので、2人は病室を出た。


水沢と三嶋は、仕事に戻った。

流石に、今夜は飲めなかった。

仕事から戻った水沢は、自宅でカレーライスを食べて、テレビを見ていた。

すると、ほっぺたに冷たいモノを当てられた。

「しゅん君。飲もうよ」

と、水沢の嫁さんは缶ビールを渡した。

「サンキュ。茶園先生が倒れたから飲み会開くのは憚れてね」

と、言うと缶ビールをプシュッとプルタブを引いた。

嫁さんは、テレビを観ながらガハハハと笑い、缶ビールを飲んでいた。


夫婦で飲むのも楽しい。息子は、キッチンに立ち、両親のツマミを作っていた。

息子は、料理人志望なのだ。だから、高校は調理科。

ニンニクの焼ける良い匂いが漂う。

作っていたのは、タコの足のニンニク炒めであった。

水沢は、息子に、

「ありがとう。お前は立派な料理人になる」

と、言うと息子は照れて頭をかいた。

夫婦で炒めものを食べながら缶ビールをお代わりしていた。

今の水沢の生活は充実している。

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