第10話楽しみ方あれこれ

一柳と沖山は、馬刺しにたっぷりとニンニクを乗せて食べた。

明日は、早出と言うのに。

新見も尾形も、馬刺しに夢中。

「君たち、そんなにガツガツ食べるなよ。お代わりはいくらでも、あるんだから」

「水沢さん、馬刺し嫌いなんですか?」

と、尾形が言うと、

「オレは九州出身だから、もう馬刺し飽きたよ」

「羨ましい」


茶園先生と水沢、三嶋は、球磨焼酎を飲みながら、辛子レンコンを食べていた。

「やっぱり、辛子レンコンは人吉ですな!先生」

「水沢君、君は良い故郷を持った。熊本だったかい?」

「いえ、鹿児島です」

「鹿児島も良いところだ。鳥刺しが美味しいね」

「はい。今度、送ってもらいますから」

「楽しみだ。な?三嶋君」

「はい」


若いヤツラは、キャッキャ言いながら、馬刺しを食べていた。

茶園先生は嬉しそうに、焼酎を飲みながら、

「私が研修医の頃は、貧乏していてね。毎日、ネギとモヤシの炒めモノだったよ」

と、言いながら若者の方を振り向いた。

「先生、僕なんて水だけでしたよ!」

「三嶋ちゃん、まだ、マシだよ。オレなんか、公園の水だったよ。水道止められたんだ。1ヶ月間」

「その経験が、今はモノを言うんだよ。このタバコ吸えるだけで、感動するのね。大学病院に見切りを付けて、この病院に拾われて、今は楽しいよ。君たちと飲むのも大事な時間だよ」

「先生にそう言われると嬉しいな?三嶋君」

「うん。そうそう」


若いヤツラは、馬刺しをお代わりしていた。

それを横目に、楽しみ方は色々あると水沢はそう感じた。

早出の一柳と沖山は、茶園先生と45歳組に挨拶して、一足早く帰っていった。

残された5人は、しばらく「熊本屋」で話してから解散した。

三嶋と水沢は2人して、タバコを吸った。

今週末、理事会の会議に出席する事なった。


いつもはジャージの水沢もスーツを着て、出勤。

朝の9時。

「本日の理事会は、山内理事退任による、新しい理事の選定が主な内容となります。では、権田理事長お願い致します」

権田理事長は、咳払いをすると、

「新しい理事は、水沢春太君に指名します」

水沢は口から心臓が飛び出るくらい驚いた。

「皆さん、反対の方は挙手を」

誰も、手を挙げながった。

「新理事は、水沢君。君だ。しかし、現場の仕事は続けてもらうよ」

「は、はい」

これは、権田理事長と茶園先生が決めた事であった。

理事会が終わると、水沢の元に茶園先生が近付いてきた。

「そう言うこと。ね?今夜はどうだい?」

と、飲み誘う。

「分かりました」

三嶋が水沢に、

「やったね!水沢理事」

「辞めてくれよ。今夜、君もどうだい?今夜」

「悪い、今夜は家族サービスの日なんだ。また、誘ってよ」

水沢は茶園が待つ、「なだ千」に一人で向かった。



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2024年9月21日 09:00

お酒で、記憶にございません! 羽弦トリス @September-0919

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