第9話夏祭り
今夜は、「ひかりごけの里」の職員のコミュニケーションを図る為の、ささやかな夏祭りが行われた。
8月の昼から、公園でバーベキュー。
三嶋は課長の仕事に慣れてきて、何かと水沢に相談していた。
ビールで乾杯した。飲めない人間はジュースで。
若手の一柳と沖山が女子と騒いでいた。
尾形亜美と新見ちゃんは、水沢らと飲んだ。
そこに、茶園先生が現れた。
若手は皆、緊張した。しかし、水沢らは、
「先生、こっちこっち」
と、手招きした。
「いやぁ〜、暑いね。チンカチンの冷っこいルービー」
と、茶園が言うと尾形がプラスチックのコップにビールを注いだ。
「ありがとね?君、名前は?」
「尾形です。今年入社しました」
「そ〜かい、そ〜かい、頑張れよ」
「はい。ありがとうございます」
一柳と沖山は焼き場担当で、ビールを飲みながら、肉や野菜を焼いていた。
誰かがトウモロコシを持ってきて、醤油の焼けた良い匂いが漂った。
新見はまだ、彼氏が出来ない悩み事を三嶋に話していた。
水沢は、まただ!と、思いながら、茶園と飲んでいた。
茶園は、焼けたアンガス牛をパクパク食べていた。
「おいおい、茶園先生、もっと高級なモノを食べて下さいよ!この串なんか、飛騨牛なんですよ」
「おれは、安いのが好きなんだ」
若手や他の職員は、茶園を恐れている。理事であり、変な事を言うとクビになると言う、デマが回っていたのだ。
だが、水沢らのメンバーは茶園の本性を知っているので、先生、先生と話し掛けるのだ。
「先生、今夜はどこで飲むかい?」
と、水沢が言うと、
「暑いからな〜、千代で良いんじゃない?」
「居酒屋千代ね。電話しときます。うちらのグループ全員で。7人予約入れときます」
夕方、多くの職員が談笑している中、茶園、三嶋、水沢、一柳、沖山、尾形、新見の7人で千代に向かった。
既に、7人は酒臭いがいつもの座敷席で飲み始めた。
一柳と沖山は正座していた。
彼らは、緊張しているのだ。最近は、水沢が鬼の現場監督になり、三嶋は課長だ。
茶園先生のデマもあってか、2人は正座していたのだ。
茶園先生が2人に足を崩しなさいと言われても正座していた。
沖山は27歳だが、まだまだ子供で若いヤツラと飲んだ方がマシだと思っている。一柳は、女の子が居ないと話さない。
尾形と新見は視野に入れていない様子。
皆んなで芋焼酎のお湯割りを飲んでいた。作るのは一番歳下の沖山だった。
大将が挨拶に来た。
「こんばんは。いつもありがとうございます。茶園先生。今夜は良い魚仕入れていますから」
茶園は、
「何が入ったの?」
「真鯛です。先ずはお刺身。そして、味噌焼きです」
「あい、分かった」
「良いね。君、もう20年もこの店にいると、婿養子とは思えないよ」
「ありがとうございます。水沢さん。妻の
「そ〜うだねぇ。三嶋君」
「うん、そうそう」
凛は子供を3人産んでいる。今は育児に夢中で店に滅多に来ない。
居酒屋千代は、千代婆さん時代からの付き合いだ。
若手は、こう言いう所を勉強した方が良いのだ。
一柳と沖山は刺し身を食べると、うんめぇ〜と言う。
茶園は、刺し身には興味が無いようだった。
味噌焼きを楽しんでいた。
「この西京焼きとは違う味噌が美味しいね?尾形君」
「え?さ、サイキョウヤキ?」
「すいません。先生。いつか、尾形に西京焼きを食べさせますんで」
「頼むよ!三嶋君。君らは、もっと後輩を良い店で飲ませなさい」
「すいません」
「すんません、先生」
と、2人は反省した。
「でも、茶園先生。三嶋課長と水沢さんは、私達をよく店に連れて行ってくれるんですよ!」
「しっ!新見、良いから、良いから」
と、水沢が制したが、
「この前は、馬刺しを食べに連れて行ってもらいました」
「馬刺し?」
と、一柳が言う。
「うん、馬刺し。熊本産の」
「オレ達、行ってねぇよ……。水沢さん、今度頼んます」
「良いよ。連れて行く。あの時は君ら夜勤だったからね」
「おい、水沢君。今から、馬刺し食いに行こうか?」
「えぇ〜!」
「何が、えぇ〜!だよ。ここの勘定はそうだな、三嶋課長、君に任せた。馬刺しは水沢君だ。それくらい、稼いでいるでしょ?」
「はい」
「は〜い」
2人は生返事をした。
7人は歩いて、馬刺しを食いに、「熊本屋」へ向かった。
一柳と沖山は、翌日早出だが、どうしても馬刺しが食べたいらしい。
2人は既に酔っ払っている。
先陣は水沢がきった。
「こんばんは〜」
「あらっ、水沢さん。あっ、茶園先生も。いらっしゃい。馬刺しでしょ?あるわよ」
と、ママは嬉しそうだった。
7人は、馬刺しと
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