第4話夜勤明けの誘い

休みの朝、ゆっくり起きて歯磨きして天気予報を確認していた。

土日休みではない、水沢はたまに嫁さん、息子の家族サービスをする。

前日がそうだった。

もう、45歳にもなると、女の子のおっぱいが気になる事はない。

若かりし頃はまだしも、子供が高校生になるともう、若い子らが自分の娘の様な気がして、そんな気持ちが起きないのだ。

だから、水沢と三嶋の同期組は女性職員から人気があるのだ。

セクハラを働いた有馬は単なるバカだが。

大人になるとは、そう言う事なのだ。

でも、60代でも女の尻を追いかけるヤツがいるが、そんな人種は水沢は仲間に入れない。

酒を飲んでも、女の店には行かない。キャバクラは20代で卒業すべきと言うのが水沢、作者かみさまの持論だ。

ニュースを見ていると、LINEの通知音が。

水沢は確かめた。

夜勤明けの新見美月にいみみつきからであった。


【おはようございます。今、夜勤明けです。今日は飲みたいんで一緒に飲みませんか?】

と。


【いいね。11時に居酒屋ぎんの入り口で待ってる】


【はい。後、休みの尾形ちゃんも参加しますんで】


【了解】


時間は10時半。水沢は直ぐに着替えて、居酒屋ぎんに向かった。

ジーンズにポロシャツ姿で。

どっから見ても、オッサンだ。腹が出てきた。醜い豚。

10分待った。


そこに、タクシーが1台停まった。

中から新見と尾形が降りてきた。居酒屋ぎんは朝の7時から23時まで営業している。のれんをくぐると、「いらっしゃい……あ、水沢さん。こんにちは。今日はいい鯉が入ったよ」大将が満面の笑みで言う。

水沢はウンウン頷いて、座敷席に座った。

新見は30歳の独身女性、尾形は今年の新人だが新卒では無いので28歳もあるのだが、2人はまだまだ可愛かった。

親戚の伯父さん感覚で2人は接しているが、彼はサビ管でたまに職員を怒鳴るので鬼の水沢と呼ばれているのを水沢は自覚し、2人の女性は知っている。

だが、プライベートでは優しい伯父さんなのだ。


3人は瓶ビールで乾杯した。

若いお兄ちゃんが鯉の洗いを運んできた。お兄ちゃんは金髪だ。

「水沢さん。今日は大将が珍しく鯉を手に入れて、この皮を味わって下さい」

「君、浅田くんだっけ?」

「はい」

「最近、動きが良いじゃない。頑張れよ。仕事もバンドも。家族は元気かい?」

「はい。ありがとうございます」


浅田は直ぐに厨房に戻った。ホール担当ではないが、挨拶にわざわざ来るのだ。結婚して、1歳の子供がいる。


「水沢さん、鯉って美味しんですか?」

「え?君たち鯉を食べた事ないの?こうやって酢味噌で食べると美味しいよ」

2人は恐る恐る鯉の洗いを口に運んだ。

「あっさりしてますね」

と、新見が言った。尾形も頷く。

しばらく飲んで、

「新見君。君はオレに話したいことがあるんだろ?」

「分かりますか?」

「だって、珍しいから。夜勤明けに君がオレを誘うのは」

と水沢が言うと新見はポツリポツリと話し始めた。

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