第7話

「ソウデスカ。ユウキ様ハソンナ事ニ……」

「シューゲルさんも大変だったんですね」

 僕たちは洞窟の中で机を囲み、シューゲルさんが淹れてくれたお茶を飲みつつ、近況を報告しあった。ほかのゴブリンたちは思い思いの場所に座り、僕たちを見ている。

 どうやらシューゲルさんは魔王崩御のあと、奉公先を失ったゴブリンとともに新たな奉公先を探していたが、見つからず、仕方なくギャングとして生活していたらしい。

「デ、ユウキサマハ、ナゼココニ?」

「それは……」

 依頼を受けてここに来たことを説明する。

「ソウダッタノデスカ……」

 シューゲルさんは少し俯いて、僕のほうを向いた。

「ユウ様ハドウスルオツモリデスカ?」

「えっ?」

 そりゃあもちろん。

「任務は失敗だったことにするよ」

「……貴方様ハ、アノ時ト変カワラズ、……」

 再び彼は俯くと意を決したように顔を上げて、椅子から降りて、他のゴブリンたちに向き直る。

「総員! 自害セヨ!」

「えっ……?」

 シューゲルさんの言葉の意味が僕には一瞬わからなかった。

 自害。自害ってつまり……。

 僕が言葉の意味を呑み込めた時には、既に彼らは行動を始めていた。

 自分に攻撃魔法をかける者、自分で自分の頭を壁に打ち付ける者……。

「なんで……、どうして……みんな! やめてくれ!」

 止めようと手を伸ばす。それをシューゲルさんが制止させる。

「シューゲルさん、どうして!?」

「イインデス。私タチハ。ドノミチ私タチハ人ノ道ヲ外ハズレタ生キ方シカデキマセン。ソウデアルナラ、人ノ道ヲ歩ンデイル貴方ノ礎ニナリタイノデス」

「そんな、僕のためにそんなことまでしなくていいんだ……」

 全身の力が抜ける。

「うっ……っ」

 嗚咽が漏れて、口を押える。

「ユウ様」

 顔を上げると、シューゲルさんがほほ笑んでいた。そして、

「貴方様ハ生キテクダサイ」

 そんな、まさか!

「待って!」

 彼に手を伸ばす。その瞬間、頭が吹き飛び、彼の肉片が、伸ばした手と僕の顔にかかる。

「そんな、どうして……、みんなっ!」

 僕はその場でしばらく泣き崩れていた。

 泣き疲れた後、ふらふらとゾンビのように立ち上がり、僕は家路を目指した。

 この一件で僕は一か月生き延びれるほどのお金を手に入れた。


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