第6話

 ソフィアさんと出会う前。確かこれは僕がこの村に来てから1年後のことだったような気がする。その当時の僕はただこの村に受け入れられたくて安い仕事、危険な仕事関わらず請け負い続けていた。

 そんな中、とある依頼が街に舞い込んできた。ゴブリンの討伐依頼だった。依頼は3万円。どうやら行く先々で略奪を繰り返している集団がこのあたりに来ているらしい。

 こういった依頼はそこそこある。魔王討伐から魔物たちの統制が崩れ、彼らが行う略奪事件が立て続けに発生するようになったのだ。あいつらが正義の名のもとにお父様を殺した結果がこれだ。お父様を守れなかったこと、みんなを守れなかったこと、無力な自分に口惜しさと憎悪が湧き上がってくる。

 複雑な思いを抱えつつゴブリン討伐に向かう。

 ここか、と指定された洞窟を訪れる。

「やるしかないか」

 マチェットにコンデンサを装填し、暗闇に足を延ばす。

 一寸先も見えない。敵に気づかれる危険もあるが魔法を使って明るくする。敵に気づかれにくくするように点滅させながら進むべきか、それとも常に灯しながら行くべきかを少し逡巡する。常灯したほうが相手の位置も見えると考え、魔法を使う。

 とにかく奥に進んでいく。入口の光がもう見えなくなったその瞬間。

 ふっと殺気を感じる。囲まれたかと思った瞬間。とっさに防御魔法を張る。

「――ッ!」

 前方から攻撃魔法、後ろから切りつけられる。防御魔法を後方だけ切り、反転して斬りつけようとマチェットを振る。

 ひょいと軽々よけられ、相手が刃物を握り直し、相対する。

「……え?」

「……アレ?」

 お互いの時間が凍り付く。

「もしかして、シューゲルさん?」

「モシカシテ、ユウキ王子サマ?」

 僕を斬り付けてきた相手は、僕がまだ王宮にいたころ、世話をしてくれたゴブリンだった。


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