決着
「誰だお前は!!」
沈黙を破ったのは第一王子殿下だった。さて、どう答えたらいいものかと考えていると陛下が口を開いた。
「彼は我の客人よ」
その言葉に場が凍りつく。それもそうだ、陛下が直々に招待した客人ともなれば話はだいぶ変わるのだから……
「ですが……貴方は部外者、何も知らないのにそんな事を言うなんて常識知らずなんですね。いくら顔が美しかろうと知識と常識がなければ……」
そうすました顔で言うのは宰相の息子であるルデインだ。
「こんな会場のど真ん中で大声で婚約破棄を言い渡す方が常識がないと思うのだが?」
私の返答に会場の人達がそうだそうだと賛同してくれる。
「婚約者である第一王子殿下、なにか言ったらどうですか?そもそも貴女方の婚約は陛下が決めたものではなかったのでしょうか?」
そう、何を隠そう最初に婚約破棄を言い渡したのは紛れもない第1王子殿下だったのだ。
「わ、わたくしの方からこんな方願い下げですわ!」
オット予想外の展開だ。なんと殿下の婚約者であり、私と同じ四代公爵家であるシャルティアラ家の長女、リシア嬢がキレた......これはマズイ……
「常識のないのはどちらですの?婚約者を放ったらかしにして別の女性と毎日行動を共にし、ドレスまで贈ってあげる方が非常識だと思いますわ。」
静かに口元を扇子でかくして微笑むリシア様……
「それは、クロエの家は貧乏で新しいドレスを買うお金が無いから!」
「だとしてもそんな派手でダサくて無駄に高いドレスを贈る必要はなかったのでは?」
「いい加減にしろ!!!」
リシア嬢に殴りかかろうとするが……私があっさり鎮圧
他の婚約者たちもそれぞれ問い詰め始める。
「ろ、ロバートは私の味方よね?顔も見せに来ない婚約者なんてロバート様にはふさわしくないわ」
そういうクロエに思わず掴みかかろうとしたが帰ってきた回答は意外なものだった。
「いや、相応しくないのは僕の方だ……こんなふざけた茶番に乗せられて彼女を傷つけた……」
バチン
「だったら謝ればどうなんですの?何をウジウジしているのかしら?」
ロバートを思いっきり叩いたのはファーレ……
事態がどんどんカオスになっていく中で陛下が口を開いた。
「クロエ嬢、君の持ち物から怪しい薬が見つかった。検査した所媚薬だったそうだ。ついに1人に絞るつもりだったのかね?」
「ち、違うんです!私嵌められたんです!」
まだ言い訳をするか……ある意味その根性というか思考回路というか……羨ましい限りである
「そうでしょ?!みんな何とか言ってよ!」
クロエの腰巾着をしていた貴族令息たちは陛下に抗議していたがそれ以外の生徒は黙りしていた。それもそうだ。あの子……黒い狐の術が解けたのだから……
「なんで?!全部上手くいってたじゃない!どうして!?私はヒロインなのよ」
ギャーギャーの喚くクロエに陛下はため息をこぼしとどめを刺すのだった……
「君には牢屋に入ってもらう。身体検査や事情聴取も行う」
「陛下!その仕打ちはないのではないですか!クロエは嵌められたと言っています!」
やはり実の息子……第1王子は噛み付くか……
「愚かな息子よ、お前からは王位継承権を剥奪する。」
「そんな……」
膝から崩れ落ちる第一王子
「諸君、今日の夜会が台無しになってしまったことを謝罪する。」
そういうと陛下は去ってしまった。事実上のお開きである。騎士に捕らえられたクロエはずっと喚いていたがそのまま連れていかれた。
私も帰るか……なんというか……呆気なかったなぁ……
そんな事を思いながら馬車に乗り込もうとするとロバートが走ってきた。
「エル、今まで本当に申し訳ありませんでした。もし望むのであれば婚約破棄も受け入れましす。本当に悪いことをしました。軽率な発言や行動で君を傷つけた……一生かけて償う覚悟はあります。だから……お願いだ。もう一度チャンスをください。」
びっくりしている私をよそにお父様はもう今日は帰れと言って馬車を走らせた。
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