決戦
いよいよ夜会当日だ。私はこの日のためにさらに魔力を濃縮し、練り上げる訓練を行った。より美味しい、より濃厚な魔力を作る為に……
「エル〜!せっかくならエル変装しない?」
面白い!!お父様がドレスを用意してくれるって言ってたけど絶対こっちの方が面白……いや、動きやすい!!
そう、私はお父様のドレスを差し置いてルキの提案に乗っかる事にしたのだ。私は早速準備を始めた。私は銀髪の髪色に紫の目をしている……オマケにこの体は顔もいい……つまり目立つのである。
せっかくなら前世でやっていたコスプレをしてやろう。
そう思った私は朝のうちに大急ぎでウィッグを制作し、衣装をブティックで買い揃えた。まずは肌が綺麗にして、次に鼻を高くして、彫りの深い顔を作ってと、深い紫色のウィッグを被り、横に髪を流していい感じに結ぶ。目の色は魔法で澄んだ空色に変える。胸を潰して紳士が着用する服を着用し特注で作ってもらったが使い道のなかったインソール入りの靴を履けば完成だ。
完成!!
「エル!かっこいい!僕も僕も!!」
そう言うとルキは少年の姿へと化けた……そんなことも出来るのか?
「可愛いでしょ?でも魔力の消耗が激しいから長くは難しんだよね……」
そういうと元の姿へと戻った。
「でも夜会前に魔力供給をすれば夜会の間は持つよ!これであの子をびっくりさせてこっち誘い込むんだ!人化は魔獣の憧れだからね!」
なるほど……いい案だ……
思わず口角が上がる
「お嬢様、旦那様がお待ちです」
ドアを開けるとメイドが悲鳴をあげて走り去ってしまった……それもそうだろう、だって見た目は別人なのだから……
「その格好は……」
「安全面を考慮して1番動きやすい服にしました。それにこの格好なら私だと気づかないはずです。会場に着いたら声も変えます!」
「そうか……」
お前は何を目指しているんだ……まさか変なものでも食べたのでは……という眼差しでこちらを見てくるお父様。そんなに見られると穴が開きます。
会場に着くと前世でやっていたゲームのヒーローみたいな甘ったるいのにイケボ!!な声になる魔法を自分にかけた。私と父は別々に会場へと入った。
やっぱ王家主催の夜会って規模が違うなぁと感心していると……
「貴方、見ない顔ね、夜会は初めて?」
そう話しかけて来たのはクロエだった。男性陣を引連れて派手なピンク色のドレスで髪飾りにもドレスにもふんだんに宝石が鏤められている。
いくらしたんだろう……そしてどこから出てきたんだろう……
「実はそうなんだ。父の仕事の手伝いが忙しくてね、」
爽やかなイケメンを意識しながら言葉を選んで返す
「そうなのね、お姉さんを頼っていいわよ。もし良ければこの後一緒に踊らない?」
魚が自ら罠にハマるとは……あとは私の技量次第!
「喜んで」
クロエの手の甲に軽いキスを落とす。満足そうに笑うクロエを見て思わず笑ってしまうところだった。
ダンスが始まると私はクロエに話しかけた。
「お姉さんってとっても可愛くて綺麗だね、もし良ければもっと話したいな。」
「ふふっ、私って高いのよ?でも貴方になら少し時間をあげるわ」
引っかかったァァァァ⤴︎ ⤴︎!!!!!
心の中でガッツポーズをすると私は静かに微笑んだ。
ダンスが終わると
「次は僕と踊ってくれないか?」
と彼女にメロメロな高位貴族達がワラワラと集まってきた。この人混みに紛れて私はそっと影からルキを出した。ルキは魔獣にしか聞こえない声で話し始める。
「僕、エルのおかげで人化できたんだ〜!エルってば魔力も濃厚だし、優しいし、最高だなぁ~」
すると突然1匹の黒い狐がクロエの影から出てきて人を避けてこちらへと近づいてきた。この狐こそが今回の事件を引き起こした張本人でクロエに力を貸していた存在である
「ちょっと、人化できるほどの魔力なの?」
にやりと口角を上げるルキ
「食べてみたらわかるよ」
ルキが私に合図を送ってきた。計画通り……
私は黒い狐の元へと駆け寄ると魔力を分け与えた。
「フフッ、濃厚すぎませんこと?ねぇお兄さん、私と取引しない?」
狐は取引が好きだとルキから既に聞いてある。
「じゃあ僕に乗り換える気はないかい?君が人化できる手伝いをしよう。その代わり僕の言うことは聞いてもらう。暴力的なことや無理強いはしない。」
「乗りましたわ、今から妾はそなたのものじゃ」
「ちょっと!!婚約破棄ってどういうことですの!?」
いいタイミングだ。
お父様から聞かされてあった連続婚約破棄が幕を開けたのだ。
「お前はクロエを虐めた、そんな醜い女はいらん!俺は王になる人間だ、慈悲深い女でないと無理なんだ。そしてお前はそれにあてはまらない、よってお前には婚約破棄を言い渡す!」
目に涙を貯めてうるうるさせるクロエ
「さぁ、幕開けだ。」
私の言葉と同時に黒い狐が術を解き、崇拝していた生徒たちが正気に戻った。
「悪いのは……婚約者がいながら別の女狐にベタベタ鼻の下伸ばしている貴方ではないでしょうか?」
私は泣きそうになるのを我慢しながら婚約破棄を言い渡された令嬢の前に立つ。
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