第2話 街
数十分ほど、山を下ると村の入り口が見えてくる。
あ、検問とかない感じね。するすると、村に入るとカランサ村と書いてある看板が出迎えてくれる。大都市ほど活気盛んで人が山ほどいるわけでもなく、限界集落ほど人がいない訳でもない。ぱっと見、平穏な普通の村な感じだ。
先ほど、狩ったクマの肉をお金にするために売れそうなお店を探す。
「すいません」
精肉店らしきお店を見つけたので、声をかける。
「あれ、いない?」
「どうした?」
特に返事もないので、ほかの所に行こうとしたところで、後ろから声をかけられた。見たところ、二十代前半ぐらいの若めの男性。
「山の中でクマを狩ってきたので、売ろうと思いまして……」
「あぁ、この街なら、うちが買いとってるよ。付いてきな」
なんて頼もしいんだ。困っている中、声もかけてくれて。
自分の店に向かっているであろう男についていく。
「あそこはこの前までやっていたんだが、爺さん、婆さんだから仕事がきつくて辞めたんだ」
「そうだったんですね」
「んー、見ない顔だし、初めてこの街に来た旅人か?」
「そうですね。そんなところです」
「まぁ、困ったことがあったら、なんでも聞いてくれ」
「はい。じゃあ、今の暦と年数は何ですか?」
「お! 面白いこと聞くねぇ。俺を試してるのか?」
ふと、男は俺の方に振り返る。
「今は、カラサス紀千二百三十年。若しくはチタン四年だな」
「その通りですね」
「やっぱり、俺を試してたか。他にも問題出してもいいぞ」
何とか会話を合わせながら、早く時間が経つことを祈っていた。
*
男の店に着くとサンラク商店と書いてあった。男に招かれるままに中に入り、自分の手持ちのクマの肉を売る。
「おー、これはパスグマの肉だな。しかも、いい状態の肉だね。んー三百五十ルイでどうだ」
「……」
「おっと不満かい?」
そういうことじゃない。さっきから何を言っているのかよく分からない。男の発言の八割が意味不明といっても過言ではないレベルだ。カラサス紀? チタン? 知ったこっちゃないんだが。
「あの久々に下の世界に来たので相場がわからなくて……」
「なんだ。そういうことか。あー。ならさっきの質問もそういうことか」
男の部屋に入らせてもらい、この世界について教えてもらうこととなった。
幾年へとタイムスリップした英雄の冒険日記 海亀君 @umigamekun
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