幾年へとタイムスリップした英雄の冒険日記

海亀君

第1話 ここどこ?

ホー、ホー。

目が覚めると全くもって、知らない場所にいた。辺りを見渡すが、見当がつかない。

体格がよく、身長の高い男、マーシャル・ブイヨンは、黒竜との闘いに勝ったところまで覚えているが、その後の記憶が全くなかった。

とりあえず、下るか。

山の中腹であろう場所からは、一つの村が見えていたので、そこで情報を集めることにした。

鎧も剣もなく、普通の一般人程度の服装なので、注意深く下山をする。なぜなら、モンスターが出てきた時の対処法がほぼないからだ。

三十分程度歩いていると、川が見えてきた。

「ふぅ」

川の水で、顔を洗い石に腰掛ける。

 酒でも飲みすぎたのかな。

 何かしら持っていないかなと、ポッケトに手を突っ込むがやはり、何も持っていない。

 ざわざわ。木々の間に風が通り向け、森全体がさざめきだす。

 嫌な予感がする。

 ガサガサ。

「!」

音のなる所を見ると、俺の三倍以上はあるクマが自分を睨んでいた。

「仲良くしましょうよ」

「グゥゥゥ」

駄目みたい。敵意はないと話してみたが、こちら、意図は伝わらなかったようだ。どうしたものか。あまり、軽率に殺してしまうのもよくはない。

「ガゥゥゥ」

「あっぶね」

クマの対処に迷っていると容赦なく襲ってくる。

しょうがない。お腹もすいていることだし、食料とさせていただきますか。

クマと間合いを取りながら、辺りに使えそうなものを探す。

「お!」

 クマの目の前にいい形状の木の枝があった。

「じゃあ、いっちょ戦いますか。負けたからって文句は言わないでよ」

「ガォォォ」

 マーシャルの言葉にこたえるようにクマが吠える。

「送風」

 クマを指さし、風魔法を唱える。ドォンと大きい音が鳴り響くと同時にクマはあっという間に吹き飛ばされた。その直後に、クマの目の前に行き、落ちている木の枝を拾う。

「鉄加工」

 変幻魔法を唱え、木を剣へと変幻させる。木にぶつかり、狼狽えているクマのもとへ駆け寄り、剣へと変幻させた木をクマの心臓へと刺す。

「ありがとな」

 クマに手を合わせ、感謝の気持ちを伝える。

 これで当分の間は、飯に困らないな。

 クマがぶつかった衝撃で折れた木を椅子代わりに座り、クマを解体する。

 クマとの戦いで一つ分かったことがある。それは、自分はあまりなまっていないことと、このクマはパスグマという大人しめのクマということ。

 妙だ。俺が森に引きこもった時でもパスグマに襲われたことはなかった。俺を食料と認識したか、それとも以前よりも狂暴化しているのか。

 お金ないし、この食糧をもとにさっき見えた村へ売りにでも行こう。そして、ついでの情報ももらっていこう。

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