少女の日記

この日々を忘れないように、今日から日記を書いてみたいと思います。

笑顔を忘れない為に。

朱莉を守れる、強いお姉ちゃんになる為に。


今日はたくさん桜とお話ししました。

桜は本当に優しい女の子です。

真面目で真っ直ぐで素直な子。

口は悪いけど、本心では常に相手を気遣っている。自分を犠牲にしてでも、他者を守れる強さが彼女にはあります。

だからこそ、私は彼女も支えてあげたいと思いました。もらった恩も返したい。

貰った優しさに対して、返せるものが私にあるかはわからない。けれど自分にできることを探していきたいと思います。

悲観するのももう辞めます。

私の人生は颯汰と桜を信じて一歩を踏み出すことから始めたいと思います。


幼稚園の時、私は家政婦の人と暮らしていました。忙しい両親とは会話も少なく、親と話した記憶はあまりありません。

小学生になり、颯汰の家に預かってもらうことになりました。そこでどういう話があったかはわかりません。でも幼稚園の頃から淡い恋心を颯汰に抱いていた私にとっては幸福でした。

千尋(ちひろ)お母さん。大地(だいち)お父さん。そして颯汰。この三人から私は家族を学びました。

時に怒られることもあって、泣いたことだってありました。でもそれはいつも私が間違った時だけだった。そして最後には必ず抱きしめてくれました。そして愛をたくさん教えてくれました。

だから辛い時に思い出すのは3人の笑顔でした。

3人と出会えたから、朱莉に対して優しくしてあげられるんだと思います。愛を知っているから愛を注ぐことができるんだと思います。


中学の三年間は辛い日々でした。

親からは私の人生の大半が決められている事を教えられました。そしてそのレールに颯汰が乗せられそうになってることも知りました。

私はあの優しい家族が巻き込まれるのだけは嫌でした。だから私は颯汰に頼らないようにしました。

そんな孤立無援の中で頑張れたのは、私にとってのお母さん、お父さん、そして颯汰から貰った沢山の愛を妹に教えたいという一心でした。

私がこの子のそばに入れるのは高校入学までだと思っていたのもあります。だから一緒にいれる間に沢山の愛情を注ごうと思いました。

高校に入学すれば、私の体は婚約者の所有物になるはずだったからです。

でも中学を卒業した時に親から高校卒業までは好きにしていいと言われました。

今日まではそれがなぜか分かりませんでした。

でも桜から聞いた今回の契約で理解しました。

中学の頃に私を守ったのは颯汰だったのでしょう。本人はきっと一生教えてくれないと思います。だって功績を高々に語る人間じゃないから。

彼は大地お父さんとよく似ています。きっとその背中を見て育ったからでしょう。

小学生の時、大地お父さんが帰り道で人助けをしているところをよく見ました。でもそれを自分から口に出すことはありませんでした。それはきっと立派なことで、もっと誇っていいはずなのに。家では寡黙だけど優しく、大切な人を守り続ける騎士のような人でした。

そして颯汰は私を影ながら守り続けてくれた私のナイトでした。

全てを理解してから、一人で我慢している気になっていた自分を恥じました。

彼が歯を食いしばってくれたから、今の私がある。この幸せな時間はきっと彼が血の滲む努力をして勝ち取ってくれた時間なのでしょう。

それなら楽しまないと。朱莉にも楽しいことをたくさん教えないと。

そしてこれから先も一緒に笑うために、この運命と戦わないといけません。

子は親を選べない。でも生き方は選べる。

だから私も戦います。桜と颯汰と一緒に。

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