二人の幼馴染

「げ…。」

どうしても颯汰の試合が見たかった私は、朱莉を連れて学校へと向かっていた。

その途中、会いたくなかった人と鉢合わせする。勿論慎吾だ。

「顔を合わせるなりその反応は傷つくな。」

「貴方のことが苦手なの。近づかないでくれる?」

「これでも長い付き合いなんだが!?」

確かに付き合いは長い。だけどそれと親密度は関係ない。

「ただの腐れ縁じゃない。桜の事は嫌いじゃないけど、貴方は嫌い。誰にでもいい顔する人って得意じゃないの。貴方がそんなんだから桜が颯汰に靡いてるんじゃないの!?」

「まじで!?」

気づいてなかったんだ。この人本当に桜のこと好きなのかしら?全然見てないと思う。

ため息をついて歩き出す。朱莉が腕の中で寝ていてよかった。この人と会わせたくない。

そんな事を考えながら歩いていると、後ろから歩く音が聞こえる。

「着いてこないでくれる?」

「いや、目的地は一緒だろ?」

「じゃあ離れて。接触禁止だから。」

「ほんとに酷いな!?」

話したくもないので前を向いて歩き出す。

ほんと顔だけで人気を買ってる人って嫌い。

まぁ同族嫌悪なんだけど。同族だからこそ、私はこの人とは分かり合えない。好きにもなれない。好きとか言っておきながら、幼馴染をちゃんと見てないところも嫌い。

桜をアクセサリーの様に侍らせてるこいつは性格が終わってる。

私は一応颯汰しか見てない。だからそこは決定的に違うと言える。

歩いている最中も慎吾は私に話しかけてきたが、徹底して無視を決め込むのだった。


前半は終始颯汰のチームが押している。

というか颯汰が凄すぎる。颯汰の試合は映像含め全て見ているけど、今日の出来はこれ以上ないと言える。

というかスリーの飛距離がおかしい事になってる。ぼぼハーフラインから決めてる。

「すげーな。颯汰だけ別次元じゃん。」

気づけば隣にいるこいつが本当に鬱陶しい。

「ねーね?この人誰?」

「さぁ。知らない人よ。」

「そっか!」

「酷くねえか!?」

「いい加減黙ってくれる!?」

慎吾が煩いせいで全然集中できない。どこかに行ってほしい。そんなことを考えているとハーフタイムになる。

前半動きっぱなしだった颯汰は、だいぶ疲れているようだ。そんな颯汰に桜がボトルを渡す。

顔は見えないけれど楽しそうだ。胸がずきりと痛む。けど私はあそこにはいれない。私には朱莉がいるから。

朱莉が颯汰に手を振ると颯汰がこちらに気づいて手を振り返してくれた。ファンサまで完璧だ。格好いい。

そんな事を考えていると後半が始まる。

颯汰はディフェンスよりに動いているようだ。

的確にパスカットはするが、前半よりは運動量を落としているようだ。

「アレはわざとだな。意図的に力を抜いてる。向こうがエースを温存してるからかな?体力に難ありと勘違いもさせれるいい手だ。」

解説おじさんと化している慎吾の言葉を聞く。

成程。そういう意図があるんだ。でも話したくないから細かくは聞かない。

試合はあっという間にウチの高校の勝利で終わった。

颯汰達が二階席にも頭を下げて引き上げていく。たぶんこれからミーティングだ。

だから私も帰るとする。待っていたら迷惑だろう。朱莉も疲れたのか、うとうとしている。

私は早々に慎吾に別れを告げて家に帰った。

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