幼馴染は本心を口に出せない
今日颯汰が家に来た。
朱莉は終止テンションも高くて、とても楽しそうだった。
その日、私は朝からドキドキとしていた。
彼が家に来るのは半年ぶりくらいだ。
家を片付けて、何着も着ては脱いでを繰り返して、今までで一番真剣にメイクをした。
話したいことはたくさんあった。
だけど今日は朱莉の為に彼を呼んだのだ。
なら朱莉に楽しんでもらって、私はオマケでいい。だけど少しは私を見て欲しかった。可愛いって思って欲しかった。
彼との時間は本当に短い。授業中は隣にいれるけれど、授業が終われば私は直ぐに教室を出なければならない。
だから話せる時間なんて1時間もない。
桜が羨ましい。部活の後でも彼女は颯汰と仲良くしてるのだ。これだけ時間に差があれば勝ち目もない。唯一勝っているのは幼馴染という過ごした時間の長さだけだ。
だけどその時間の長さが物理的に抜かされるのも時間の問題だろう。
「取られたくないよ…。」
彼が帰ってから私は玄関で蹲る。でもその気持ちを彼に言うことはできない。
彼は優しい。私が助けてって言ったら全てを捨てても私を助けるだろう。そうなれば彼の夢や目標はどうなる?間違いなく実現は不可能になる。だから私は口に出せない。
きっと桜の方が彼を幸せにできる。
側で支えて、彼は夢を叶えるだろう。
社長令嬢である私と結婚すれば、彼を両親の会社に巻き込むことにもなる。
「もう…ダメなのかな…?」
涙が流れる。親は私の事も妹のことも見てはいない。だからこの状況を改善する方法はない。
「私がもっと普通の家に生まれていればこんなことにならなかったのかな…。」
嘆いても状況は変わらない。だから私はひとしきり泣いたら立ち上がった。
「まだ…なんとかできる。チャンスを我慢して待たないと…。」
メンタルなんてずっと前からボロボロだ。
だけど諦めの悪い私はまた前を向くために立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます