トラック6:自称妻と、らぶらぶデート♪

【SE:鳥の鳴き声】


「……ん、起きた?」


「おはよ」


「調子はどう? ……ばっちり?」


「それは良かった」


「で、記憶の方は……何か、思い出した?」


「……まだ、何も?」


「そっかぁー」


「意識を取り戻してから一週間は経つのに、結構かかるね」


「思い出させてあげようと、毎日毎日あーんなにいちゃいちゃしたのに、なんて薄情な夫なんでしょう」


「このままだと、ずっと記憶喪失のままかもねー?」


「……え?」


「やだなぁ、嬉しがってるわけないじゃん」


「二人の思い出、取り戻してほしいに決まってるって!」


「……また嘘吐くときの癖が出てる?」


「もー、一体その癖ってなんなのよ。教えなさいよー」


「私だけ一方的に不利なの、ずるいぞー」


「……まあ、思い出さなくてもいいって思ってるのは、ほんとだけど」


「だって、これから新しく思い出を積み重ねていけばいいわけだし?」


「時間はたーっぷりあるもんね?」


「何せ、これからも一生一緒なんだから……ね?」


「……あ、そうだ」


「せっかくだし、今日はデートしない?」


「ほら、行ったことのあるデートコース辿れば、何か思い出すかもしれないじゃない?」


「私も暇だし」


「それに、何も思い出せなくても……新しい思い出には、なるじゃない」


「ね? いい考えでしょ! ……どう?」


「……そう言ってくれると思った! じゃあ、デートの準備、するから! あなたも早くしてね!」


「準備が出来たら、出かけましょ?」



……

…………

………………


【SE:電車の音】


「……と、いうわけで、駅!」


「さーて、最初はどこに行こうかな……なんか行きたいところ、ある?」


「私的には……っと」


「あれって、もしかして……」


「! やば! 隠れて隠れて! 早く!」


「そこの……ビルの隙間! 入って、早く!」


【SE:足音】


(声が耳元に近づく)


「ふー……危ない、危ない。見つかるところだった」


「え……ああ、ちょっと知り合いがいて、ね」


「知り合いなら挨拶くらいしたらどうだ、って……いやー、ちょっと、都合が……ね?」


「会いたくない知り合い……っていうか、見つかりたくない知り合い、って感じかな」


「……え、いや、べ、別にあなたと一緒に居るところを見られたくなかったとか、そういうことじゃないよ」


「私の……自慢の、かっこいい、旦那様、だもん」


「ほんとだよ」


「ほんとに……大好きだから」


「あなたのこと……愛してる、から」


「……えへへ」


「なんだか、照れるね」


「……行ったかな?」


(ビルの隙間から出る)


「うん、行ったみたい」


「えへへ、急に引っ付くことになって、ドキドキしちゃったね?」


「火照りを冷ますために、まずは喫茶店に行こうか」


「いいお店、知ってるんだよ」


【SE:靴音】



……

…………

………………


【SE:ドアベルの音】


「……ね? 雰囲気いいでしょ」


「お気に入りなんだよ」


「それじゃ、頼んじゃおうか」


「すみませーん」


「この、『カップルドリンクセット』ください」


「……何?」


「驚くことないでしょ……夫婦なんだから」


「お得だし、ここに来たらいつも頼んでるんだよ」


「もう頼んだんだから、つべこべ言わないのー」


「あ、もう来た。届くのが早いのもこの店のいいとこ」


「ほら、飲みましょ?」


「何、その顔。カップルドリンクなんだから、一つのグラスで飲むに決まってるでしょ?」


「喉乾いてるでしょ? 早く飲もうよ。ほら、ストローのそっち側咥えて」


「ちゅー……って、二人一緒に、ね?」


「はい、ちゅー……」


【SE:ジュースを飲む音】


「……美味しいでしょ?」


「ふふふ、顔、近いね?」


「照れちゃってー」


「……体冷ますために来たのに、逆に熱くなっちゃったかな」


「あ、セットのデザートも来た」


「じゃあ……口開けて。はい、あーん」


「ん、素直でよろしい。それとも開き直ったのかな?」


「真っ赤な顔、隠しきれてないけどね」


「私にもちょうだい。あーんして、あーん」


「……ん、美味しい」


「食べ終わったら、プラネタリウムにいこっか」


「薄暗くって、とってもムードがいいんだよ」


「(耳元で)カップルシートなら……存分にいちゃいちゃ出来るし」


「楽しみにしてて、ね?」


……

…………

………………


「今日は空いてて良かった~」


「こっちこっち。早く寝転んで?」


「ふわふわで、気持ちいいね~? いい席~」


「ここ、アロマの香りで満たしてるんだって。落ち着くね」


「あ、暗くなってきた。始まるみたい」


「……ね。もっとこっち寄って」


「大きな声で話すわけにはいかないから……」


「もっと近づいて、囁くように……ね?」


【BGM:プラネタリウムっぽい、落ち着いたBGM】


(声は耳元で、囁くように)


「……わ、綺麗だね」


「満天の、星空……」


「……いつか、さ。二人でこういう景色が見られるところに、旅行に行くのもいいかもね?」


「温泉とか、入っちゃって……」


「きっと、すごく楽しいよ」


「……ね。絶対行こ?」


「……約束だからね?」


「また事故に遭って記憶喪失になったりしたら、駄目だよ?」


「……ふふ、冗談だって」


「またそんなことになっても、私がずっとお世話してあげるから……」


「私は、あなたの……妻なんだから」


「あなたのことが……世界で一番、大好きなんだから」


「ずっと、ずっと……傍にいるから……」


「……ねぇ」


「手……繋いで?」


「……えへ」


「おっきい、ね……」


「すごく、安心する……」


「あなたも、安心する?」


「なら、良かった」


「……綺麗、だね」


「いっぱいのきらめきが、空を覆って……」


「でも、空の下には、私たち二人だけ」


「……夢みたい」


「本当に、夢みたいな時間……」


「この時間が、ずっとずっと続けばいいのに……」


「いつまでも、いつまでも、あなたと二人で……」


「……そう、出来たらいいのに」


「……大好き」


「ずっと、ずっと……あなたのお嫁さんで、居たいよ……」


「……あ」


「もうそろそろ、終わり……かな」


「二人の時間は、あっという間だね」


「……寂しいな」


「……ねえ」


「また、デート行こうね」


「こうやって、手を繋いでさ……」


「何度も、二人でいちゃいちゃしよう、ね……」


「……約束して」


「嘘でも、いいからさ……」


「……ありがと。嬉しい」


「私、今一番幸せだよ……」


(場内が明るくなる)

(距離が離れる)


「……終わっちゃった、ね」


「……じゃあ、帰ろっか!」


「私たち二人の家に……ね」

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